★2009年から始まる裁判員制度・解説と問題点★



★裁判員が選ばれる刑事裁判の種類★

皆さんもご承知の通り、平成16年に制定された「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(略して裁判員法)によって、平成21年には「裁判員制度」が始まります。各地で 「摸擬裁判」が催され、裁判所・法務省の広報活動もされていますが、その過程で様々な問題点が指摘されています(^^;このファイルで大雑把に把握しておきましょう!あなたも何時「裁判員」に選ばれるか分からないのですから。
どんな犯罪が裁判員制度の対象となるか?
裁判員法第2条によると、
1.死刑・無期懲役・無期禁固に当たる罪
内乱罪、外患誘致罪、外患援助罪、現住建造物等放火罪、爆発物破裂罪、現住建造物浸害罪(出水させて人が住んでいる(あるいは現にいる)建物などを浸害した者)、列車転覆等及び同致死罪、往来危険による汽車(列車)転覆罪、水道毒物等混入及び致死罪、通貨偽造及び行使罪、(天皇の)詔書偽造罪、強制わいせつ等致死罪、殺人罪、危険運転致死罪、身代金目的略取(誘拐)罪、強盗致死罪、強盗強姦及び致死罪があります。
2.裁判所法26条第2項第2号に掲げる罪で故意により被害者を死亡させたもの。
1.で挙げた罪で故意に被害者を死亡させた場合です。この裁判所法26条2項に該当する罪の場合は「裁判官は複数で合議制で行わねばならない」とされています。つまり、軽い罪の場合は裁判官が一人の時もあります。ヽ(’’)

★結構問題な「裁判員が選ばれる手順」★

さて、前の章のような犯罪が起き、容疑者(裁判の判決が確定するまでは正式には犯人かどうかは分からない)が起訴された場合、「裁判員候補者」を衆議院議員の選挙権を有する者から各地方裁判所が無作為で選びます。但し、次に挙げる人は「裁判員候補者」にはなれません。(裁判員法13条〜15条)ヽ(’’)
1.国家公務員法38条に定める「官職に就くことができない者」(禁治産者・準禁治産者・禁固以上の刑に処せられて、その執行が終わっていないか、執行猶予期間の終わっていない者・懲戒免職を受けてから2年を経過しない者など)
2.義務教育を終了していない者(但し、検定試験などで義務教育を終了したと同等と認められるものは除く)
3.禁固以上の刑(禁固・懲役・無期・死刑)に処せられた者
4.心身の故障のため裁判員の職務遂行に著しい支障がある者
5.国会議員
6.国務大臣
7.一定の地位にある国家公務員
8.自衛官(防衛省の事務系高級官僚も含む)
9.裁判官、裁判官であった者
10.検察官、検察官であった者
11.弁護士、弁護士であった者
12.弁理士
13.司法書士
14.公証人
15.司法警察職員(警部以上の警察官)
16.常勤の裁判所職員
17.常勤の法務省職員
18.国家・都道府県公安委員・常勤の警察職員
19.法学部の教授・准教授
20.司法修習生
21.知事、市区町村長
22.禁固以上の罪で起訴されて、まだ事件が終結していない者、逮捕・拘留中の者
つまり「裁判に圧力・影響を与えられる者」「法律の専門家」「犯罪を犯して刑の終わっていない者」(自衛官は緊急時に備えるためか?)は除外して、まったくの一般国民を裁判に参加させようというものです。ヽ(’’)
A.裁判員候補者名簿の作成(23条)
1.市区町村の選挙管理委員会から提出された選挙人名簿に基づいて『裁判員候補者名簿』を裁判所が作成する。2.裁判所はこの『裁判員候補者名簿』から、あらかじめ「死亡していることを裁判所が知った者」「前章で掲げた『裁判員になれない者』を削除する。3.市区町村は裁判所に送付した名簿の内死亡者、衆議院選挙の選挙権を失った者を通知する。


B.裁判員候補者の呼出し(20条〜27条)
1.公判の期日が決定したら裁判所は『裁判員候補者名簿』に基づいて『裁判員候補者』を裁判所に呼出す。2.呼出す人数は辞退者などが出ることを考慮して多めに地方裁判所が決める。3.『裁判員候補者』へ裁判所が「呼出状」を送達4.「呼出状」に記載された日時・場所に『裁判員候補者』が出頭しない場合は過料(10万円以下)に処せられる。←ここで呼出された人は1日潰れる


C.裁判員を辞退できる場合(16条)
1.70歳以上の高齢者2.自治体の議員で議会開催中の者3.常時通学をする学校に在学する学生4.過去5年以内に裁判員・補充裁判員になった者5.過去3年以内に選任予定裁判員であった者6.過去1年以内に裁判員候補者として出頭した者で裁判員・補充裁判員に選任された者7.過去5年以内に検察審査員・補充員であった者8.以下の事由、その他政令で定めるやむをえない事由により裁判員選任期日に出頭できない者イ.重い疾病・傷害があるロ.介護・養育をしなければ日常生活に支障がある同居の親族がいることハ.従事する事業で重要な用務があり、自ら処理しなければ重大な損害をこうむる場合ニ.父母の葬式その他の社会生活上重要な用務で他の日時に変更できないもの


D.事件への係わりがあって裁判員候補者として不適格である場合(17条・18条)
1.被告人&被害者2.被告人&被害者の親族、親族であった者3.被告人&被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、補佐監督人、補助人、補助監督人(これらは全て法律上の地位です・家裁などで任命されたりします)4.被告人&被害者の同居人、被用者(従業員)5.事件について告発または請求をした者6.事件について証人、鑑定人になった者7.事件について被告の代理人、弁護人、保佐人になった者8.事件について検察官、司法警察職員(警部以上)として職務を行った者9.事件について検察審査員、審査補助員として職務を行い、又は補充員として審査会議を傍聴した者←ここまでは被告&被害者の関係者。10.事件について刑事訴訟法266条2号の決定(検察の不起訴処分に対して、審判しなおすことを裁判所が決定すること)、略式命令、上級裁判所による差し戻し、管轄違いによる事件の移送、移送された場合の原判決に関与した裁判官・裁判所事務官←ここまでは裁判所関係者。及びこれらの取調べに関与した者(警察官を含む)ただし、受託裁判官として関与した場合は除かれる。11.その他、裁判所が「不公正な裁判」をする恐れがあると認めた者。←ここで裁判所から「不公正な裁判をするおそれがある裁判員」だと職権で決定されてしまった裁判員も「異議申し立て」できる。(42条)


E.裁判員の選任(26条〜30条)
1.『呼出状』で指定した日時・場所に「裁判員候補者」を集めて「くじ」によって『裁判員』『裁判員補充員(裁判員になった人が突発的な事態で出来なくなった場合に備えるため)』を選任する。2.検察官・弁護士はこの選任に立ち会うことができる。3.なお、出頭した『裁判員候補者』には裁判所は旅費、日当(まだ決定していないが1万円くらいらしい)、宿泊料を支払う。4.また、裁判所は『呼出日』の前に『裁判員候補者』に『質問票』を送り、「裁判員になれない者」「裁判員を辞退できる者」かどうか質問できる。「裁判員になれない者」であることが判明した時は、検察官・被告人・弁護士の請求(請求を裁判所が却下する場合は理由を明示する・更に却下に対して「即時抗告」できる)、または裁判所の職権で「不選任」とする。裁判員が不公正な裁判をする恐れがあると(裁判所が)認めた場合も「不選任」とできる←ここで「裁判員」になってしまった人はその後も裁判が結審するまで数日間「裁判員」としての任務を果たさねばならないが、「裁判員」になった場合に備えて数日間休みを取って、くじで外れて「裁判員」にならなかった人は無駄に休みを取ってしまうことになる!


F.裁判員の人数(2条・39条・49条)
1.選ばれる裁判員の人数は被告の犯した犯罪の立件の仕方によって分かれます。
a.通常の場合:裁判官3人(うち1人が裁判長)裁判員6人
b.裁判員が選任される前に『公訴前整理手続』(面倒な事件の場合、裁判の迅速化のために、検察官・弁護士・裁判官が話し合ってどの罪で起訴するか、争点は何かなどあらかじめ決めておいて、それ以外は裁判で争わない方法)が行われた場合は、裁判官1人、裁判員4人。2.こうして選ばれた『裁判員&裁判員補充員』は「公平・誠実に職務を行う旨」宣誓をしなければなりません。


G.裁判員を選ばない場合(3条)
1.被告人の言動、被告人が所属する団体の主張・その団体の他の構成員の言動から「裁判員、裁判員候補者、裁判員であった者、その親族や準ずる者」に対して危害を加える恐れのある場合。2.上の場合で現実に裁判員などに対する加害行為やその告知(被告を有罪にしたらただじゃおかんぞ!のような脅しなど)があった時3.そのために裁判員に選ばれた者の平穏な生活が脅かされ、裁判員、裁判員候補者の出頭を確保できない場合4.以上の場合は裁判所の職権、または検察官、被告、被告の弁護士の請求により、裁判員を選ばず、裁判官の合議による裁判にしなければならない。


H.裁判員補充裁判員の任期(48条・84条・86〜89条)
まず、前提として被告人がいくつかの犯罪を犯していた場合は「併合罪」と言ってそれらの刑罰を足し算して一括して裁判をします。例えば「強盗強姦致死罪」の場合、強盗に入った被告が金品を奪い、その場にいた女性を強姦し、殺してしまった場合、この一連の行為について因果関係や故意が立証できれば「強盗強姦致死罪」1つの審理で済みます。ところが、「元々被告が単なる空き巣に入る目的で家屋に侵入(窃盗については故意がある)したら、室内に女性がいて騒がれそうになったため、とりあえず縛った(この時点で強盗)。で、金品を物色して手に入れて逃げようと思っていたが、女性が縄を解いて抵抗しようとしたため、もみ合いとなる内に、互いに性欲を催し性行為をしてしまったが強姦をしようという意思はなかった。性行為後、すぐに通報されてはいけないと思った被告が口をテープで塞いだが、たまたま鼻まで塞いでしまったため、女性は窒息してしまったが、被告はそこまで想定せずに逃げてしまったため、女性の死亡について逮捕されるまでまったく分からなかった。」という場合、いくつかに罪を分割して「強盗致死罪」「強姦致死罪」それぞれについて故意があるか審査しなければなりません。通常は一括してそれぞれについて立証し刑を足し算(といっても最高は死刑なのでそれ以上にはならない)します。これを「併合事件」と呼びます。この場合はその「併合事件の地裁の判決が下されるまで」が任期になります。ところが、「強姦」について「女性も性行為に及んでも良いと思ったという推測できる証拠があったり、成り行きで性行為をしたもので、無理やり強姦する意思は被告にあったとは認められない」場合、「強盗致死罪」と「強姦致死罪」の2つに分割して裁判の審理を進めなくては、この「強姦の意思」がネックとなって裁判が進まなくなります。こういう場合で裁判官の判断によって分割して審理をするものを「区分事件」と呼びます。この場合には立証が容易だった「強盗致死罪」の地裁の判決が出るまでが裁判員の任期です。無論、この後、裁判官は「強姦致死罪」の可能性も含めて「併合罪とした場合全体の刑罰」の審理をしなければなりませんが、裁判員も別の人を選任しなければなりません。なお、この場合、既に判決の出た「強盗致死罪」の部分(部分判決という)に関しては被害者側・被告側(とその弁護士)共に意見陳述(刑事訴訟法293条・316条)が出来ません。つまり、1.併合審理にせよ区分審理にせよ地裁の1つの裁判が裁判長によって「終局した」と告知があるまで2.裁判員・裁判員補充員に危害が加えられる恐れなどがあって、裁判官のみで裁判をすることになったとき裁判員。補充員の任期が終了します。


I.裁判員・補充裁判員の任務・義務・権利(6〜8条・10条・52〜63条){裁判員が裁判の途中で参加できなくなったり解任された場合に備えて、補充裁判員に選ばれた人も裁判の最初から審理に同席し、証拠物も閲覧していなくてはならない。}
1.裁判員の任務:a.(犯罪の)事実の認定b.法令の適用c.刑の量定(但し、法律やその解釈については裁判官から説明されるため、素人である裁判員は裁判官の解釈に従わざるを得ず、被告に死刑や無期刑を下すという心理的負担だけ背負わされる危険もあります。
裁判員の義務:a.公平誠実な職務遂行b.守秘義務c.裁判の公正に対する信頼を失墜させる行為の禁止d.品位を害する行為の禁止e.証人尋問・検証・公判日(審理、刑の言い渡し、刑の免除、無罪の言い渡し、少年事件での家裁への移送)に指定された場所に出頭すること。
権利:a.証人等への尋問ができるb.裁判外で裁判官が証人尋問、事件の検証をする時は裁判官に立会いを要求できるc.被害者(代理人の者を含む)に対して質問できる。d.被告人へ質問できるe.裁判員が審理しない審理(例えば、死刑・無期に該当しない犯罪も被告が犯していた場合など、その軽い方の刑の審理)に立ち会えるf.裁判官と同様に「自由心証主義」(証拠の証明力の判断の自由)である。


J.裁判員の解任事由(41条〜45条)
1.検察官・被告・被告の弁護士の請求による解任a.裁判員&補充員が「公正かつ誠実な審理」をする旨の宣誓をしない時b.裁判員が出頭期日に出頭しない時c.補充員が出頭期日に出頭しない時d.裁判長の法令解釈・訴訟判断に裁判員が従わない時(重要!)&意見を述べなくてはならない時に意見を言わない時e.補充員が前項の行為をした時f.裁判員&補充員が衆議院議員の選挙権の無い者であることが判明した時&裁判員や補充員になれない者であることが判明した時g.裁判員&補充員が「不公正な裁判」をする恐れがある時h.裁判員・補充員が選任前に送付された「質問票」で記載すべきところに記載が無かったり、虚偽の記載をしていた、または選任時の質問に答えるのを拒んだり虚偽の応えをしていた時i.裁判員・補充員が裁判中に裁判長の指示に従わず、暴言その他不穏当な発言をした時→以上の理由で解任されたときは裁判員・補充員は「異議申立」ができます。
2.裁判官の職権による解任a.「解任の請求」の内a.b.c.g.i.の理由である場合は裁判長は職権で裁判員&補充員を解任するb.「解任の請求」の内d.e.f.h.の理由である場合は裁判長は所属の裁判所に通知し、その裁判員・補充員が係わっている裁判の裁判官以外の裁判官の合議で「解任」するかどうかの決定をする→以上の場合は裁判員&補充員は「意見の陳述」ができます。c.補充員の必要がなくなったときに補充員を解任できる
3.裁判員の申立てによる解任裁判員&補充員に選任された後に、重い疾病・傷害や同居の親族の介護、裁判員に選ばれた人自身でなければ処理できない重要な業務、父母の葬式などの重要な社会生活上の用務が生じた場合は裁判員&補充員の側から「解任」を請求できる。


K.罰則(106条他)
裁判員がしてはいけないこと:1.公平誠実を欠くこと2.裁判員&補充員になって知り得た秘密を洩らすこと3.「公正」ではないと疑われる行為4.品位を害する行為5.裁判員&補充員選任のための候補者に対して送付される「質問票」に記入すべき欄に記入しないか虚偽の記入をすること6.「裁判員候補者」に対してなされる質問に答えないか、虚偽の答えをすること7.「裁判員・補充員・裁判員候補者」として定められた日時に出頭しないこと8.「法令に従い公平誠実に職務を行う」旨の宣誓をしないこと9.「意見を言わねばならない時」に言わないこと10.裁判長の法令解釈に従わないこと11.裁判中に暴言などを言うこと12.裁判が終わる前に「どの程度の刑になるか」などを外部に洩らした場合
何人もしてはいけないこと:1.裁判員などに関する個人情報の漏洩2.裁判員などに事件に関して接触をしてはならない。3.裁判員に対して請託をすること4.裁判員になった従業員に事業者が不利益な扱いをすること5.裁判員になった者に手段を問わず威迫すること
罰則:1.候補者・裁判員・補充員が出頭すべき日に出頭しなかった場合=10万円の過料。2.裁判員に請託をしたもの(裁判に影響を与える意見を裁判員に言った者も同様)=2年以下の懲役又は20万円以下の罰金。3.裁判員(その親族を含む)を威迫した者=2年以下の懲役又は20万円以下の罰金。裁判員であった者に対しても威迫したら同罪。4.裁判員が知り得た秘密を洩らした時=6ケ月以下の懲役又は50万円以下の罰金5.裁判員であった者が知り得た秘密を洩らした場合=50万円以下の罰金。但し利益を得る目的で洩らした場合は6ケ月以下の懲役又は50万円以下の罰金6.検察官・弁護士・被告(現在・過去を問わない)が裁判員候補者の氏名・質問票の内容・裁判官の質問に対する回答の内容を洩らした場合=1年以下の懲役又は50万円以下の罰金7.裁判員候補者が質問票に虚偽記載または裁判官の質問に虚偽の回答をした場合=50万円以下の罰金又は30万円以下の過料。8.その他の裁判員の禁止事項違反は裁判員を解任されるだけです。


★これだけは知っておきたい刑法の基礎の基礎・裁判員が関与する部分★

1.故意と過失:まず、犯罪を被告が起こした場合、例えば「殺人罪」であれば「人を殺す意図があれば故意」「殺すつもりが無ければ(予期もしていなかった)過失(この場合で『痛めつけてやろう』という意思はあった場合は傷害致死罪になる)」という違いがあります。更に注意したいのが故意にも2種類あるということです。一つは本人の自白・物的証拠(始めから人を殺すのに充分な威力のある武器などを事前に購入していたなど)などから「人を殺す意思がはっきりしている場合」で狭い意味での「故意」です。もう一つは「未必の故意」と呼ばれるもので、「通常の常識があれば、こういうことをすると人が死んでしまうということがわかっていて、そうなっても構わないと被告が思っていたことが推測できる場合」です。良く使われる例としては、「酒を飲むと暴力的になることを本人も自覚していたのに、人と一緒に酒を飲んで暴力を振るい、他人を死亡させてしまった場合」などは、殺人または傷害致死について未必の故意があったと推定されます。この場合、争点は「酒を飲むと暴力的になるかどうか本人が自覚していたかどうか?」になります。
2.因果関係相当説:『事実認定(被告が犯罪を犯したという事実があるかどうか)』という裁判で最も重要な部分で、無論、裁判員も審理に参加します。「説」と言っていますが、かつて19世紀頃は色々な学説があったのですが、現在では「Aという者のした行為(原因)と人が殺された(結果)の間には、そう判断せざるを得ないという相当な証拠が無ければならない」というのは定説になっています。
さて、無論被告の自白は捜査や取調べで捏造される可能性もあるわけで、「因果関係を裏付ける物的な証拠」が重要になってきます。例えば「凶器となったナイフに被告の指紋があった」ということだけでその持ち主が犯人であるという証拠になるでしょうか?答えはNO!です。例えば、船釣りをする人は糸が絡んだ時に、スクリューに絡まると船が動かなくなって遭難することもあるので、船長の判断で「糸切れ〜!」と言われることがあります。よって、船釣りをする人は大体愛用のナイフを持っています。で、Aという人が釣りの帰りにナイフ(勿論Aの指紋がベタベタ付いている)を落としてしまった→それを前々から「Bさんを殺したい」と思っていたCが「いいもの見つけた!」と自分の指紋が付かないようにタオルかハンカチに包んで持ち帰り、手袋をして犯行に及んだ場合などは、「ナイフに付いた指紋」は決定的な証拠にならない訳です(Aさんのナイフが使われたという状況証拠にはなるが)他にも「Aが犯人である」と言うためには、「Aがナイフを落としたことは無い」という証拠も必要になります。
さて、『凶悪犯罪が日常茶飯事』になってしまった日本では警察も忙しいかとは思いますが、テレビで見た事例でこんな事件があります「被告側:バスの運転手=『交差点で右折しようと対向車が通り過ぎるのを待っていたら、いきなり警察の白バイが突っ込んできて、転倒。乗っていた警官は死んでしまった。』検察・警察側=『現場で捜査した結果によると、白バイが走ってきたにも係わらず、バスの運転手が交差点内に進入。バス・白バイ共に急ブレーキをかけたが間に合わず激突した。よって非はバスの運転手側にある』証拠品:バスの前方右側に激突痕のある写真他現場の写真(道路も写っているがブレーキ痕はなし)。後日、補強証拠としてバスのブレーキ痕だという道路の黒い2本の筋の写真。交通事故鑑定人:『事故直後の写真にブレーキ痕が無い。事故車と同じ型のバスはサスペンションが柔らかく、周囲の交通事情からしてバスが交差点に強引に入ったとしても20km程度の速度までしか出せなかったと見られ、その程度の速度では急ブレーキをかけてもブレーキ痕はできない。また、乗客の証言からもバスが急停車したとは思われない。』テレビの取材スタッフ=『ブレーキ痕は警察の捏造!実際は白バイに乗った警官の前方不注意』」しかし、裁判所は「警察の証拠は信頼できる。」として現在このバスの運転手は業務上過失致死で服役中です!!
このように『事実認定』というものは、裁判で提出された証拠だけで判断するのは大変に難しく、また検察側の鑑定人が正しいか、弁護側の鑑定人が正しいか、証拠は充分なのか?判断が難しいものですヽ(’’)『法律の素人を集めて、犯人では無い人に無実の罪を着せているかも知れないという精神的負担を、裁判官だけではなく一般人にも共有させる制度』が裁判員制度なのかも知れません(・・;

★「象牙の塔」だった裁判所・量刑の不公平★

さて、もう5〜6年前の事件ですがテレビのニュースで2つの事件の判決を見ました。1つは「40代の男性が年老いた寝たきりの母親の介護を10年以上し(結婚も出来なかった)、そのために仕事も辞めざるを得なくなり、疲れ果てて無理心中を図ったが自分は死に切れなかったため、殺人罪に問われました。裁判所は『寝たきりの母親を殺すとは言語道断!無期懲役を言い渡す』」というものでした。もう1つは「ギャンブルの金ほしさにアパートに侵入し、住人を殺して金品を強盗した20代の男。判決は『身勝手な犯行だが、被告は反省しているので懲役8年』」「おい!ちょっと待てよ!」とテレビに向かって叫んでしまいました(^^;「寝たきりの老人を24時間介護」し続けることの精神的・肉体的負担!しかもそのためにその男性は結婚もできず、仕事まで辞めなくてはならなくなった。自分の人生を、親のためとはいえ、完全に棒に振った訳です『情状酌量』の余地は充分にあると思いました。もう1つの強盗事件では被告は反省している(おそらく、警察・検察官に対しても、裁判中も反省の言葉を言い続けたのでしょうが)たかが、ギャンブルの金が欲しいだけで他人を殺してしまい、後は口先だけの反省。「それで情状酌量されて、たったの懲役8年!」この事例は如何に裁判官が世間に疎いか?を如実に物語っています。こうした「量刑のアンバランス」というのを感じている人も多く、普通の人の感覚が求められて裁判員制度ができたと言ってもよく、選ばれた人の責任は重大な訳ですヽ(’’)ここで、『量刑の判断にとって重大な要素である事実認定』に関していくつか注意点を述べてみます。
・証拠、証言が警察・検察の「思い込み捜査」によるものではないのか?例えば、重大事件ほど警察も「早く容疑者を捕まえねば!」とまず容疑者と目星をつけた人間を別件で逮捕しておいて、後から物的証拠を「作ってしまう」ということが過去何度かありました。裁判員になった人は常に「論理的・科学的に被告がある犯罪をした」と推定するために充分な証拠かどうかを吟味しなければなりません。下手をすると無実の人を死刑にするかも知れません(・・;
・被告の自白は信用できるのか?警察・検察というところの人々は何人もの犯罪を見慣れたプロですが、それだけに一般の人間が容疑者として逮捕され、警察での勾留22日それでも充分な自白が得られなければ検事勾留(検察官が裁判所に申請)30日間がプラスされます。誘導尋問、取調べ中の威迫、あるいは『早く認めて楽になろう』という甘い囁き色々な手練手管を使われて、精も根も尽き果てて「自分がやった」と言ってしまう容疑者も現実に存在する訳です。現在検事の取調べに関してビデオ撮影をして「違法な取調べ」はしていないという証拠にすることが検討されていますが、『最高検は「供述調書が適正に作られたことを公判で証明するのが狙い。取り調べの機能を損なわない範囲で、検事が相当と認める部分の録画・録音を行う」としている。2006・5・9朝日』とのことで、警察・検察に都合の良い部分だけをビデオ撮影して、都合の悪い部分はカットする可能性もあります!また、検察官が取り調べをする前に警察の段階で、密室での取り調べで繰り返し「お前がやったんだろう」といわれ続けることで、容疑者が暗示にかかってしまう可能性もありえます。供述調書を取る際の取調べは、警察での段階から、編集の無い連続したビデオ撮影であることが必要であると思われますヽ(’’)法律の初学者が良く言われる言葉に「100人の犯罪者を取り逃がしても1人の無実の罪人を作ってはならない」と言うものがあります。もし「裁判なんていい加減なものだ」という認識が広がると、誰も司法関係者を信頼しなくなるからです。(・・;

★「開かれた裁判所」となるか?冤罪の山となるか?★

さて、最高裁・法務省・検察庁なども「裁判員制度」に関する広報活動をしてきましたが、「<裁判員広報>産経と千葉日報 金銭支払い「参加者」動員2007年1月30日1時51分配信 毎日新聞 最高裁は29日、裁判員制度を広報する「裁判員制度全国フォーラム」で過去4回、共催した産経新聞大阪本社と千葉日報の担当者がアルバイトを雇って参加者を集めていたと発表した。最高裁は「新聞社独自の判断で行われ、事前の相談や事後報告もなかった。金銭を払って参加者を募るのは不適切で、主催者として誠に申し訳なく、同様のことが起こらないよう注意していきたい」と説明した。  最高裁によると、同フォーラムは各地の新聞社と共催して05年10月以降、64カ所で開かれた。このうち今月20日と05年10月22日の大阪でのフォーラムで、産経新聞大阪本社の担当者が人材派遣会社に依頼し、1人当たり5000円を支払い、それぞれ70人と49人を参加させた▽05年11月20日に和歌山でも、同社担当者が「サンケイリビング」を配達する主婦らに依頼し、1人3000円で125人を参加させた▽昨年1月21日には千葉で、千葉日報社の担当者が1人3000円を支払い38人を参加させた。各会場の定員は400〜550人だった。会場での「やらせ質問」はなかったという。 26日夜に今月20日の募集について報道機関から問い合わせがあり最高裁が調べたところ、4件の不正を確認し急きょ発表した。【木戸哲】  ◇「参加人数少なく」…産経大阪本社会見  産経新聞大阪本社は30日午前0時半から、大阪市浪速区の同社で緊急会見を開いた。参加人数が少ないため、現場担当者と上司でアルバイトでの動員を決め、このうち1件については担当部長も認識していたことを明らかにした。  根岸昭正・専務取締役大阪代表は陳謝した。会見の中で「アルバイトの動員に関する意思決定は誰がしたのか」という質問に対し、根岸代表は「現場のフォーラム担当者が上司に相談して(事前の申し込み状況を見て)、あまりに人数が少ないという話になり、『努力して参加者を集めよう』と担当者と上司で決めた」と説明した。また、「(産経新聞がかかわった)3回のうち05年10月の1回については、担当部長まで報告が上がっていた」とした。【中本泰代】」とのことで、ヤラセフォーラムをやらなければならないほど、一般の関心が無いのかと言うと、「裁判員「参加したくない」増え75%に…読売世論調査 2007・1月15日23時22分配信 読売新聞  読売新聞社が実施した「裁判員制度」に関する全国世論調査(昨年12月9、10日実施、面接方式)で、裁判員として「裁判に参加したくない」人が75%に上った。「参加したい」人は20%だった。同じ質問をした2004年5月の調査と比べると、「参加したくない」が6ポイント増え、「参加したい」は6ポイント減った。  2009年の制度開始が近づくにつれ、裁判員になった場合、適切な判断ができるだろうかという不安が広がっているようだ。  参加したくない理由(複数回答)では、「有罪・無罪を的確に判断する自信がない」54%、「刑の重さを決める量刑を的確に判断する自信がない」50%、「人を裁くことに抵抗を感じる」47%が上位を占めた。次いで、「仕事や家庭の事情で時間がとれない」28%、「被告人など関係者から逆恨みされる心配がある」17%――などだった。」やはり、現実の問題としては、「本当に犯罪を犯したかどうか判断できるだろうか?」「仕事や用事をヤリクリして裁判員候補者として出頭しても外れたら、休むことにした日程が狂うし、くじに当たったら何日間か拘束されてしまう(裁判員・補充員になった者は家族も含め他人と接触してはならないため)」また、例え本当の犯人だったにせよ裁判員制度の対象となるのは死刑・無期の罪がある重大犯で、「死刑という判決になったら恨まれるかも?」と思っても当然です。もし、「無実の人に死刑を宣告してしまったら?」その精神的負担はかなり重いものがあるでしょう!(・・;
江戸幕府でさえ奉行が裁決できるのは「百叩き」まで、老中も「島流し」まで、死刑に当たる刑は徳川将軍じきじきの裁決が必要で、まだ「祟り」を恐れていた時代ですから、気の弱い将軍は「わしは嫌じゃ〜!」と死罪の裁決をしなかったくらいだそうで。。(^^;実際には法廷を傍聴している人の中に被告の関係者もいるかも知れない訳です。裁判員&補充員は制度が定着するまで覆面をして法廷に出席する程度の措置は必要でしょう!ヽ(’’)
とはいえ、今まで警察→検察→裁判所という流れの中で「現実に何がどうなっているのか」一般の人は知りえなかった、まさに「象牙の塔」の世界だった訳で、被害者&遺族ですら裁判の経過・結果すら分からなかったものが、今回の「裁判員制度」によって刑事訴訟法も改正されて、被害者&遺族が被告に裁判長の許可を得て質問できるようになりました。この点は「進歩」と言えるでしょう(^_^)