★人クローンと再生医療の現状★
定義:クローン(Κλον)とは1903年H・J・Webberが「同一の起源を持ち、尚かつ均一な遺伝情報を持つ核酸、細胞、個体の集団で、栄養生殖(種子によらない生殖)によって増殖した個体集団」として定義しましたが、元々の意味はギリシャ語の「小枝の集まり」を意味し、「挿し木」のことです。ヽ(’’)
植物:元々古くから植物のクローンは農業・園芸では利用されてきました。「挿し木」という増やし方がまさにクローン生殖で、皆さんが良くご存知の「ソメイヨシノ」というサクラですが、江戸時代末期に江戸・染井村(現在の豊島区)の植木職人がエドヒガンサクラとオオシマザクラを交配して作られた「1代雑種」で、双方の良い面である「成長が早い」という特徴を持つ反面、成長が早い分寿命が短い(他のサクラが300年くらいであるのに対して60年くらい)、実って種を蒔いても発芽しない、というマイナス面があり、このため現在日本国内のみならず海外にも植えられている「ソメイヨシノ」は最初の1本の枝を他のサクラの株に「挿し木」をして人工的に増やしたもので、DNAは最初に作られた木と同じ「クローン植物」です。また、植物本体の細胞を材料としたクローン植物(メリクロン栽培)も既に実用化されています。野生の植物でも、竹、ブドウ、イチゴなど蔓や地下茎を伸ばして株を増やしていく(栄養生殖)植物は元の親木と同じDNAを持っており、「クローン植物」であると言えますヽ(’’)
動物:植物と異なって細胞の分化が進んでいる動物のクローンの作成は大変に難しく、体細胞(ES細胞とかではなく、身体の一部の、既に何らかの組織に分化した細胞)から1匹の動物を製造することは、未だにできていません。では、動物のクローン研究の歴史を大雑把に箇条書きにして見ると。
・1891年 ドリーシュはウニの受精卵を人工的に分割、正常なウニの幼生を発生させた(人工的な1卵性双生児)
・1952年 R.Briggs&J.J.Kingらがヒョウガエルの初期胚*1の細胞や核を不活性化した未受精卵*2に移植することにより、ヒョウガエルのクローンを作った。
*1植物と異なり高等動物では分化の進んだ体細胞や組織を分離してその細胞を動物個体に成長させる(つまり、身体のどこか一部の細胞を培養して、動物の全ての骨・内臓・皮膚・脳などの全てのパーツのそろった身体を作るということ)ことは未だにできていません→これらの実験から、まだ身体各部分に分かれる前の細胞(逆に言えば身体の色々な部分に分かれる能力を持った細胞=分化能のある細胞)として、受精後、卵割が起り胚(身体の細胞になる部分)が出来た卵子からこの胚の部分を取り出してクローン&再生医療の実験に使用するようになり胚性幹細胞=ES細胞と呼ばれるようになったのですヽ(’’)*2「不活性化した未受精卵」とは未受精の卵子に栄養を供給せずに飢餓状態にして細胞の活動周期を停止させたものです。
・1962年 ガードンによってアフリカツメガエルのオタマジャクシの体細胞の核を卵子に移植することで初の体細胞からクローンが作製された。
・1981年 WilladsenがヒツジのES細胞を不活性化した未受精卵に移植することで哺乳類では初のクローン羊が作製された。
・1986年 Willadsenが更に羊のES細胞の核を、「核を除去した不活性化した未受精卵」に移植してクローン羊を作製。
・1996年 キャンベルらによってヒツジ乳腺細胞核を、「核を除去した不活性化した未受精卵」に移植してクローン羊「ドリー」を作製。初の体細胞からのクローンとして注目された。(その後、このドリーは2003年2月に死亡)
◎ホノルル法=既に身体の部分に分化してしまった体細胞からクローンを作製する方法:1.まず、身体のどこかの細胞を取り出し、細胞核に栄養が行かないように飢餓状態にします。2.細胞は普段一定の周期で細胞分裂などの活動をしている訳ですが、これらの周期的な活動が停止状態になります。3.その後、細胞核(DNAなどが入っている)を除去した未受精卵と同じ培養液に入れて電気刺激を与える4.すると、核の無い未受精卵と活動停止状態の体細胞が細胞融合を起こして同化します。5.その後、細胞の活動を促すために必要な栄養素を培養液に入れ、細胞を他の身体の部分に分化させます。
この方法によって1998年、ウシでもクローンが作れることが分かりましたが、同じ年にWakayamaらが「核を除去した未受精卵」に体細胞(身体の一部の細胞)を注入することで、「細胞融合」を行わずにクローンが作れることをマウスによる実験によって発表報告し、「体細胞によるクローン作製の標準的な方法」=「ホノルル法」として確定しました。ヽ(’’)
その後、ウマ・ヤギ・ウサギ・ブタ・ネコ・ラットなど多くの動物の体細胞からこの「ホノルル法」によってクローン動物が製造されました。(^^;
・2000年 三菱化学生命研究所がマウスのES細胞(胚性幹細胞)から「精子・卵子の元になる始原生細胞」を作る実験に初めて成功。この過程でES細胞が始原生細胞に育った段階で1000個のES細胞に対して1個の割合で『vasa遺伝子』が働きだすことを発見、また成長ホルモンを分泌する細胞を加えて更に培養を続けた結果、『vasa遺伝子』が発動するES細胞が100個に1個の割合で増加した。
・2000年 京都大学再生医科学研究所の笹井芳樹教授と協和発酵工業の共同研究で、マウスのES細胞(胚性幹細胞)から神経伝達物質のドーパミン(どういう機能を持っているかはこのHPの環境分野の「神経伝達物質」のファイルを参照してください)を分泌する神経細胞を効率よく作製する方法を開発。
・2002年 米・バイオ企業アドバンスト・セル・テクノロジー社(ACT)などの研究チームが受精していないサルの卵子を、人工的に受精卵と同様に細胞分裂(単為発生)させてES細胞を作り、神経や筋肉などに分化させることに初めて成功。痛んだ臓器や組織を治療する再生医療研究の一環として、従来の「子どもに育つ可能性のある受精卵を実験に使う」事への倫理的批判を回避できる技術的可能性を開いた。
・2003年 独立行政法人・理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)・笹井芳樹ディレクターのグループがサルのES幹細胞から痛みや熱さを感じる末梢神経細胞を作ることに成功。ES細胞→神経幹細胞→培養液に『BMP4』タンパク(受精卵の胚の中で末梢神経になる部分に存在する)を加える→末梢神経である自律神経や知覚神経、臓器の動きを制御する神経に変化した。また更に培養液に『Shh』タンパクを加えると運動神経に変化。神経幹細胞に何も加えないと同教授の2000年の研究どおり、ドーパミンを分泌する中枢神経(脳)細胞になる。
・2003年 京都大再生医科学研究所(中辻所長)がヒトES細胞の作製に国内で初めて成功したと発表。
・2003年 奈良先端科学技術大学院(当時)の山中伸弥助教授(後ほど詳細に業績などを述べます)がマウスのES細胞と普通の体細胞のDNAをコンピューターで比較、解析し、ES細胞に特有のDNAを割り出し『ESas』と命名したが、このDNAはガン遺伝子と似た構造をしており、皮膚細胞に組み込むとガンを作ったが、この『ESas』を破壊したES細胞を組み込むとガンは出来なかった。さらに同助教授らは様々な組織に分化するES細胞の万能性を引き出すDNAを特定『Nanog』と命名。このDNAを破壊するとES細胞は万能性を失い別の細胞に変わってしまうが、逆に『Naong』を人為的に増やすと、分化の過程で「他の細胞に変化するように培養」しても「万能性」が失われなかった。→これが2007年発表の「皮膚細胞から万能細胞を作り出す研究」の過程で得られた研究成果。
・2004年 韓国ソウル大・黄兎錫教授ら体細胞の核からES細胞を作ることに成功。
・2004年 京都大医学研究科・篠原隆司教授らのグループと東京医科歯科大との共同研究でマウスの精巣から取り出した細胞(精子)がES細胞と同様に神経、血液内細胞、筋肉などに分化できることを発表。『多能性生殖細胞(mGS細胞)』と名づけた。
・2005年 韓国のMBSテレビが「皮膚細胞からES細胞を作った」と黄教授らが米科学誌「サイエンス」に発表していた論文が捏造であることを報道。また、このES細胞自体も皮膚細胞から作ったのではなく、研究員の女性の受精卵の提供によるものだったことが判明。
・2005年 京都大・循環器内科の松原弘明教授らが患者の同意を得て、病気で摘出した患者の心臓の一部から心筋幹細胞を分離することに成功。心臓の一部にある酵素をかけて細胞をバラバラにすると1/8000の確立で心筋幹細胞が入っており、この心筋幹細胞を培養すると心筋・骨格筋・内皮・脂肪細胞ができた。また、心筋梗塞にしたマウスにこの心筋幹細胞を移植すると、心筋・心血管が再生した。
・2006年 京都大・再生医科学研究所の山中伸弥教授と高橋和利助手が科学技術振興機構のプロジェクトで、通常の各組織に分化した細胞(実験ではマウスの皮膚細胞)を初期化(リセット)してES細胞に戻すDNAを「Sox2」「Klf4」「Oct3/4」「c-Myc」←(ガン遺伝子として知られている)など4種類に絞り込むことに成功。ウイルスをベクター(運び屋)として4種類のDNAを皮膚細胞の核に送り込んだ。『誘導多能性幹細胞(iPS細胞)』と命名。実際に神経、心筋、肝臓細胞などに培養できた。
・2007年 京都大・山中教授らのグループが更にES細胞に近づけた第二世代のiPS細胞作製。脊髄を損傷し歩けなかったマウスに注射したところ、神経細胞が1ケ月後に一部回復し、歩けるようになった。ただし、「c-Myc」遺伝子を使うため約2割の確率でガンが発生することも分かった。
・2007年 米ハーバート大・マサチューセッツ工科大の2チームも山中教授の論文を読み、同様の実験をして成功した。
・2007年 京都大・山中教授がマウスではなくヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作ることに成功。患者本人の皮膚細胞を使ってiPS細胞を作り培養→移植すれば「拒絶反応」を起こさない組織や臓器になる。
・2007年11月 更に京都大・山中教授らはガン遺伝子である「c-Myc」遺伝子を除く3つの遺伝子で皮膚細胞からiPS細胞を作製する手法を開発するが、効率は1/100に低下。
・2007年12月 山中教授ら「c-Myc」遺伝子を除いた3つの遺伝子でiPS細胞を作る際に効率が1/100に落ちてしまう問題に対して、従来法の1/25までに効率を上げるμRNA分子を発見。
参考文献:「ウイキペディア・クローンの項目」「ドクトルアウンの気になる健康情報」「sience」「nature」「cell」の各科学誌、産経新聞、読売新聞などの新聞記事。なお、年については論文や記事が発表された年で実際の研究者の発見日とは異なります。また、おいらがネットなどで目にしたときにアバウトに「コピペ」を取っておいたものを年順に並べただけなので、研究者の研究成果の全ての記事を網羅は出来ていません。「クローンの研究」が段々「再生医療の研究」として具体化していった流れを理解して頂ければ幸いです。ヽ(’’)
・ES細胞(Embryonic Stem Cell):「胚性幹細胞」動物の受精卵が卵割を始めて、動物の身体の組織になる部分(胚)と胎盤になる部分とに別れてきたら、動物の身体になる部分(胚)の細胞を取り出して利用する。マウス・ヒト双方で実験済み。万能性は最も高いが、特にヒトの場合既に受精済みで人間になることが分かっている卵子を壊してしまうという点で倫理上の問題点が多く、各国ともに規制を設けています。
左の図はどこかのサイト(多分、財)先端医療新興財団だと思うが、忘失!)のES細胞を取り出すまでの過程を図にしたものを転載したものです。卵子の片側に寄ったES細胞を卵子の殻に穴を開けてピポット(スポイトで先が長くて細い奴)で吸い出して、研究に利用しています。今後、「人体の一部を再生」するために使用するとしても、女性が自分の卵子に適当な男性の精子を受精させて利用する以外は、他人の受精卵を使うしかなく、当然「拒絶反応」の問題が生じます。現在、このES細胞を使った「人体再生医療研究の状況」は次のようになっています。
・クローンES細胞:未受精卵と体細胞から作られ、米・バイオ企業アドヴァンスト・セル・テクノロジー社によって2001年開発、11月に発表された。同社の発表によると、「ヒトの体細胞の核(DNAがある部分)をヒトの未受精卵の核を取り除いて移植し、『ヒトクローン胚』を作製。さらに単為発生により『ヒトの胚』を作ることにも成功した」とのことですが、1.ES細胞が採取できる『杯盤胞』にまで育っていない段階での発表であったため「成果が不十分」との批判。2.『クローン人間』の製造に繋がる(アメリカなどで既に秘密裏に作られているとの噂は学者の間にもあるらしい。『スター・ウオーズのクローン兵士』にでも触発されたか?)との倫理的批判などがあります。
・mGS細胞(Multipotent Germline Stem cell):「多能性生殖細胞」京都大学医学研究科の篠原教授らのグループが、倫理的に問題のあるヒトの受精卵からES細胞を取り出すという従来のやり方に対して、マウスの精巣から神経、筋肉、血液細胞などに分化できる細胞を東京医科歯科大との共同研究で成功したもの。精子を作る精子細胞が元になっています。(2004年12月29日 米科学誌cellに発表)
・iPS細胞(induced pluripotent stem cells):「誘導性多能性幹細胞」または「人工多能性幹細胞」京都大学医科学研究所・山中伸弥教授らのグループが財)科学技術振興機構のプロジェクトで20年がかりで、「ある程度再生ができる」マウスの皮膚細胞のDNAの一部を、ES細胞の中の「他の組織に分化できるDNA」にレトロ・ウイルスを「運び屋」に使って置き換え、万能性を獲得させることに成功した。(2006年8月)これによって1.ES細胞のように受精卵を壊してES細胞を取り出すという倫理的な問題がクリアできたこと。2.他人の受精卵のES細胞を使うと拒絶反応が起るという点では今までの臓器移植と変わらなかったが、iPS細胞は患者本人の皮膚細胞から作れるため、土台となる細胞を取り出し易く、拒絶反応が起きにくいという利点があります。(2006年8月11日 米科学誌cellに発表)なお、ほぼ時を同じくして米国・マサチューセッツ工科大のRudolf Jaenischらのグループ、ハーバード大幹細胞研究所konrad hochedligerらのグループ、UCLA医科大のKathrin PlathらのグループもマウスのiPS細胞の作製に成功し、競争が激化しました。2007年11月、James Thomson(世界で始めてES細胞を確定した)らが山中教授らと同様の考え方でES細胞のうち『万能性』を決めている遺伝子を「oct3/4」「SOX2」「NANOG」「LIN28」の4遺伝子に特定。胎児の肺細胞・新生児包皮由来細胞に組み込むことで「ヒトiPS細胞」の作製に成功。ほぼ同時期に山中教授らもマウス実験時に使用し、ヒトにも共通に存在する「oct3/4」「SOX2」「KLF4」「LIN28」の4DNAを36歳の女性の顔の皮膚・69歳男性の繊維芽様滑膜細胞・新生児包皮由来細胞の3種類の皮膚細胞からヒトiPS細胞の作製に成功しました。この日米2つの論文の提出は米科学誌sienceになされましたが、論文の提出はトムソンらの方が数日早かったものの、scienceに受理されたのは山中教授らの方が早く、発表に関してはscienceが2007年11月23日発売予定だったものを前倒しして、11月20日発売として同じ号での発表となりました。この「再生医療技術の確立」に関しては「特許の取得」という観点から国際的に激しい競争となっています。かつて数年前、日本の研究者が「ヒトゲノム(遺伝子)解析結果」を「人類共通の財産」として特許も取らず情報公開していたら、チャッカり、その一部をアメリカのバイオ企業illumina社が丸写しして特許を取ってしまうということが起り、日米の学者ですったもんだした結果、illumina社がnature誌の別冊として無償で公開することで決着が着いたという苦い経験があります。今後は日本・米国(現在はこの2国の研究が他の国をリードしている)のどちらが早く「人体再生医療の確定版」の特許を取るか?で、その医療費がかなり大きく違ってくることが予想されます。(多分、米国が特許を取るとかなり高額の特許料を取るかも知れない)ヽ(’’)
さて、2007年にヒトiPS細胞の作製に成功し、「ノーベル賞もの!」と注目を集めた京大・山中教授ですが、元々は80年代初め頃整形外科の臨床医としてスタートしました。しかし、リューマチ患者に対しては患者の痛みに対して抜本的な治療薬が無く、「痛み止めを処方する」という対症療法しかありませんでした。当時の医療技術の限界を感じた山中医師は「もっと根本的に病気の治療をするには基礎研究をするしかない!」と決意。研究医となりました。それから20年をかけて研究をし、ようやく「再生医療」というものに「道筋」を付けられた訳ですが、この辺の山中教授がiPS細胞に辿りつくまでの道筋を、2008年3月1日放送のNHK教育TV「サイエンス・ゼロ」に出演した山中教授の話をおいらがまとめてみました。(^V^)重くなるので、別ファイルでご覧下さい。(science誌で発表した論文も添付しました。)
1.ES細胞、iPS細胞共に(まだ現在の技術では出来ないが将来的には)特定の人の細胞から培養・分化させ、精子・卵子を作ることで「人クローン」(一部の臓器・組織ではなく人一人のコピー)が作れるようになる可能性があること。→倫理上の問題。ただし、ある程度の年齢の人からコピーするため、染色体の端にあるテロメア(細胞が分割する度に短くなる部分=ある程度短くなると細胞が新しく分割しないため『寿命』を決めていると云われている)の長さによって、「クローン人」は元の人の余命分しか生きられない。また、血管の張り巡らされるパターン(静脈認証などで使われている)や指紋などは受精後の後天的な影響によって決まるので、まったく元の人と同じにはならない。
2.万能細胞は神経細胞や筋細胞には分化しやすいが、肝細胞は複雑であるため現在のところ作製が難しいこと。
3.ES細胞は人に成長する可能性のある受精卵を壊して取り出されるため、倫理上の問題があること。
4.iPS細胞は体細胞に分化万能性因子を組み込むため、ガン遺伝子「c-myc」ゲノムを組み込まないようにしても、ウイルスを遺伝子の「運び屋」として使うため、染色体のどの位置に組み込まれるかコントロールできず、また、他の遺伝子との組み合わせによってガン化することもありえるため、化学物質を使ってiPS細胞を作製した方が安全である可能性もあること。
5.今後、「どこの国が再生医療の治療法」として確定させ、特許を取るかで他の国の治療費が大きく変わってくる。→現在、米国と日本が激しい研究競争で他の国をややリードしており、最近中国辺りが「反日」を弱めているのはこうした技術を欲しがっているせいかも知れない??
などが、ありますヽ(’’)
さて、その後も日本国内の研究成果は続々と発表されており、今、日本が世界に誇れる研究分野となっています。(^_^)
・骨が壊死する難病患者に幹細胞使い臨床試験 京大 2007・12/07産経iza 21:38更新 京都大再生医科学研究所の研究グループが7日、手足の骨が壊死(えし)する難病の患者に、体の組織の元になる体性幹細胞を本人の骨髄から採取、移植して骨の再生を目指す臨床試験を始めたと発表した。 国が初めて臨床試験を承認。手術は来年2月に行う。全国約1万5000人の患者の治療法として期待されている。 戸口田淳也教授(再生医学)らのグループで、大腿(たい)骨の付け根の部分が血行不良で壊死する大腿骨頭壊死症の男性患者(27)に対して行う。
・心臓病の再生医療に成功 足の筋肉細胞シートで機能回復
2007・12/14産経iza 23:21更新 大阪大は14日、心臓が収縮する力が弱まる拡張型心筋症の男性患者(56)に、患者本人の足の筋肉細胞からつくったシートを心臓に張って心筋の働きを再生させる治療に成功し、20日に退院できる見通しになったことを明らかにした。男性は心臓移植が必要と判断され、当初は補助人工心臓を装着していた。現在では取り外して病院の周囲を散歩できるまでに回復したという。
こうした治療の成功例は世界初とみられ、再生医療の実現が本格化してきたことを示す画期的成果といえそうだ。主治医の藤田知之助教は「自らの細胞を使って重い心臓病を治療できる可能性を示せた」としている。
・Nature vol.451 (7177), (24 Jan 2008)Highlights: 細胞:幹細胞の増殖制御機構 幹細胞の自己複製では、増殖が続いていても多能性が維持される。胚性幹細胞の増殖は構成的で制御を受けていないと考えられているが、それは、これらの細胞では通常の細胞周期の制御機構が作用していないからである。今週号でAndangたちは、胚性幹細胞や、その他の組織特異的幹細胞種の細胞周期制御には、全くこれまで知られていなかった機序が働いていることの証拠を報告している。この機序では、内在性GABA*受容体のシグナル伝達が、これまで細胞のDNA損傷チェックポイント経路に関係づけられていた細胞周期タンパク質を介する機構によって細胞増殖を制御している。
(*おいら注:GABA=γアミノ酪酸のこと。体内に吸収されたアミノ酸・グルタミン酸が脱炭酸酵素によって分解されて作られる。GABA自体が気分を落ち着かせたり、血圧を下げるなどの働きがあるが、このGABAが塩素と共に2分子結合したものにはα、β、γの3因子ができ、ベンゾジアゼビン系の睡眠薬・精神安定剤はこのγ因子と結合して効果を発揮する(副作用が比較的少なく、飲みすぎても死に至ることはほとんど無い)。また、2分子の中心に位置する塩素分子と結合するバルビツール酸系睡眠薬は脳の延髄の機能を低下させてしまうため、飲みすぎると心臓・肺の停止などを招く。ドラマなどに出てくる「睡眠薬を大量に飲んで自殺」という時の「睡眠薬」は、このバルビツール酸系である)
・脱毛・薄毛に一筋の光明…「真皮」再生医療を承認 2008・01/31産経iza 21:26更新 国循センターと神戸大、世界初の試み 国立循環器病センターの倫理委員会は31日、手術で余った人間の頭皮に高い圧力をかけて、細胞を取り除いた真皮を作製する研究を承認した。申請した山岡哲二生体工学部長らのグループは、将来的に脱毛・薄毛で悩む人にこの真皮を移植し、毛乳頭細胞を注射して毛をはやす再生医療に発展させる計画で、世界でも初の試みという。毛包、毛乳頭細胞は本人のものを培養するため、この細胞が機能する限り、毛が生え続けると予想される。
・マウスの肝臓・胃から「万能細胞」京大・山中教授 2008・02/15産経iza 08:18更新 あらゆる細胞に分化する万能性を持つ「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を、ヒトの皮膚細胞から世界で初めて作った京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授らの研究グループが、同じ手法で成体マウスの肝臓と胃の細胞からiPS細胞を作ることに成功、マウスでの実験成果を15日発行の米国科学誌「サイエンス」電子版に掲載した。 iPS細胞の作製には、がんを引き起こすとされるレトロウイルスを使うが、肝臓や胃からできたiPS細胞は皮膚由来のものより、レトロウイルスが細胞内の染色体に入り込むことが少なく、がん化の危険が低いことが判明。iPS細胞を使ってヒトの臓器や骨などを作る再生医療の実用化に向けて一歩前進した。 これまでヒトやマウスの皮膚からiPS細胞の作製に成功した研究グループは今回、レトロウイルスを使って万能性に関係する4つの遺伝子をマウスの肝臓と胃の細胞に導入。iPS細胞ができる確率は、ヒトの皮膚で作る場合と同じ0・1%以下だったが、レトロウイルスが細胞内の染色体に混入する割合は、ヒトの皮膚の4分の1以下に抑えられたことが分かった。 一方、遺伝学的な解析をした結果、マウスの肝細胞そのものがiPS細胞に変化したことも判明。これまでは細胞に混在する未知の未分化細胞がiPS細胞の素になるとの説があったが、この解析結果でこの説の可能性はほぼゼロと確かめられたという
・新型万能細胞作製の山中教授にコッホ賞 2008・2月23日10時31分配信 読売新聞
さまざまな臓器や組織の細胞に変化する新型万能細胞(iPS細胞)を作製した山中伸弥・京都大教授が、基礎医学で優れた業績をあげた研究者に贈られるロベルト・コッホ賞を受賞することが決まった。 同賞は結核菌やコレラ菌を発見したドイツの細菌学者コッホを記念した賞で、国際的に権威ある医学賞の一つ。 一緒に受賞する独マックス・プランク研究所のハンス・シェラー教授と、米スタンフォード大のアービング・ワイスマン教授は、いずれも幹細胞研究の第一人者だ。授賞式は11月14日にベルリンで行われる。 過去の日本人の受賞者には、ノーベル生理学・医学賞も受賞した利根川進・米マサチューセッツ工科大教授や審良(あきら)静男・大阪大教授らがいる。
・<染色体数異常防止>8種類の遺伝子、阪大教授らが発見 2008・2月25日7時2分配信 毎日新聞 卵子や精子などの染色体の数が異常になるのを防ぐ8種類の遺伝子を、大阪大蛋白(たんぱく)質研究所の篠原彰教授らがパン酵母で見つけた。人間にもよく似た遺伝子があり、同じ機能を担うと考えられる。流産の半数以上やダウン症などの病気は染色体数の異常で起き、8遺伝子の変異が関係している可能性があるという。25日、米科学誌ネイチャー・ジェネティクス(電子版)に掲載される。 人間は、ひも状の染色体を23対(つい)46本持つ。染色体数が半分になる減数分裂という過程を経て卵子や精子が作られ、卵子と精子の受精で元の染色体数に戻る。この時、21番染色体が1本多いとダウン症になり、他の染色体で増減があると多くは流産になる。 減数分裂の際、一対の染色体は一部を交換しあう「組み換え」という現象を起こす。組み換えが起こらないとその染色体は正常に分かれず、できた卵子や精子は染色体数に異常があることが知られている。 幅広い生物で、重要な機能を持つ遺伝子は共通している。篠原教授らは遺伝子を調べやすい酵母を利用。染色体数の異常で胞子(精子や卵子に相当)をうまく作れない酵母を探し、遺伝子の異常を調べた。8遺伝子のどれかが壊れていると、組み換えが起こらない確率が高まった。 8遺伝子が作るたんぱく質は結合して一つの複合体を作っており、組み換えを確実に起こす役割を果たすと考えられる。篠原教授は「流産などがこのたんぱく質の機能低下で起こっていれば、治療や診断に利用できる」と話している。
・民間初の乳歯バンク事業化へ 再生医療の普及に弾み 2008・3月2日1時22分配信 産経新聞 子供の乳歯から取り出した体性幹細胞(歯髄幹細胞)を保存・管理し、歯骨や皮膚などの再生医療に役立てる日本で民間初の乳歯バンクが今月中をめどに設立されることが1日分かった。 乳歯バンクを運営するのは、バイオベンチャー企業の「乳歯幹細胞バンク」。歯髄幹細胞研究の権威である名古屋大の上田実教授の協力を得て事業化する。 歯髄幹細胞による再生医療は、歯骨の治療やしわ取りなどの美容整形分野への応用研究が急速に進んでおり、早期の実用化が可能とみられている。一般を対象とする民間の乳歯バンクができることで、再生医療業界に弾みがつきそうだ。
乳歯幹細胞バンクは、登録窓口となる歯科医院を提携先として組織化する。歯科医院を通じて預かった乳歯から歯髄幹細胞を取り出して、保存・管理する。そして、登録者の治療依頼を受けると、同バンクに保存していた細胞を出荷する仕組み。同バンクは、バンク登録者の登録料と保管期間に応じた管理料などで収益を確保する。登録料は期間に応じて10万円〜30万円程度を予定しており、数年後の黒字化を目指す。
民間の乳歯バンクとしては、米バイオエデンが平成18年から細胞の保管事業を手がけているが、細胞の取得・管理・保存から再生医療機関への出荷までを一貫して手がけるのは、乳歯幹細胞バンクが世界で初とみられる。
(歯髄幹細胞:さまざまな種類の細胞に変化し、筋肉・皮膚などの組織や臓器の再生医療を可能にする体性幹細胞の一つ。体性幹細胞は大半の組織や臓器に存在する。一般的には臍(さい)帯血から採取される造血幹細胞や骨髄幹細胞などが医療分野で応用されている。歯髄幹細胞は乳歯のなかに高密度に含まれるため採取が容易で、増殖能力にも優れていることが特徴で、再生医療の間口を広げることができる新たな有力細胞として期待されている。幹細胞には受精胚由来でどんな種類の細胞にも変化可能な「万能細胞」として、胚性幹(ES)細胞と人工多能性幹(iPS)細胞などがある。)
以上のように、遺伝子研究〜再生医療研究は日本国内だけでも日進月歩の状況にあり(色々な分野の研究者のレベルは日本は今の40代以上がピークではないか?と云われているほどだが、おいら達昭和30年代生まれは『受験戦争』と云われるくらいの凄まじい「詰め込み教育」を経験しており、有名校の入試問題なんか「専門の学者が解けない!」と問題になるほど難しかった。ちなみに、4年前までは新聞をとっていたので(今はネットでかなり欲しい情報が手に入るので、購読を止めた)毎年発表される「センター試験問題」を解いてみたりしたが、頭痛ガンガン状態のおいらでさえ、平均80%以上は正解してしまうくらいで、「こんなレベルの問題で受験勉強しないと受からない若者のツラが見たいもんだ」と思っていたが、最近つくば市に行くことがあるので、見かけるようになりましたが。。「1+1レベルの論理の基本」も理解できないアホが、かなり転がっています(^^;)将来的には、「自分の内臓のスペア」を作っていく時代になるかも知れません。また、「再生医療」も「クローン技術」の一種ですが、あくまでこの技術は「病気の治療」に用いられるべきであり、現在アメリカが日本に輸出しようとしている「体細胞クローン牛」(2008年4月4日TV朝日報道ステーション『雄牛の体細胞の核を抜き出して雌牛の未受精卵の核を入れ、別の雌牛の子宮に移植したクローン牛の子孫を繁殖させて、肉として出荷しようとしており、これらの牛は毛が抜けていたり、ヨロヨロしている牛が多いのにも関わらず、米FDAは安全であるとしており、厚生労働省も認可する予定』)のようなものは、倫理的にも食の安全からも認めるべきではないと思います!(#−−)