★多剤耐性菌とは何か?★

「多剤耐性菌」=複数の抗菌薬に対して耐性(死滅せずに耐えられる)を持っている病原性微生物や菌類(カビの一種)、ガン細胞などを言います。まず、この「多剤耐性」について述べる前にこうした「抗菌薬」などがどうして効くのか?ということを考えてみたいと思います(^^;

薬剤感受性=病原菌やガン細胞などを殺したり、増殖するのを抑制する効果のある化学物質を薬として患者に投与することを「化学療法」と言います。(他に「患者の持っている免疫のアップさせる免疫療法」や食事などで改善していく「食事療法」などがある) こうした、「化学療法」には「抗細菌薬(抗生物質など)」「抗ウイルス薬」「抗真菌(カビ系の菌)薬」「抗原虫(マラリアの特効薬キニーネなど)薬」「抗癌剤」などがあり、 これらの化学薬品は全ての微生物やがん細胞に有効という訳ではなく、使用する薬剤と対象となる微生物によって、有効な組み合わせとそうでない組み合わせがあります。
a.ある薬品がある微生物に対して有効である場合を”○○という微生物は××という薬剤に感受性(susceptibility)がある”と言います。
b.これと反対にある薬物がある微生物に対して無効(効かない)場合には、
@.元々、その薬剤が効かない。(不感受性:insusceptibility)、(自然耐性:natural resistance)A始めは効いていたが、ある時点から効かなくなった。(薬剤耐性:drug resistance)(獲得耐性:acquired resistance)という2つのケースがあります。
広い意味では、この2つの場合を総称して耐性・抵抗性と呼びますが、今、話題になっている「耐性菌」というのは狭い意味でAの場合だけを言います。
例えば、ペニシリンに関して言えば、元々ペニシリンが効かない菌を「ペニシリン不感受性菌・自然耐性菌」、現在でもペニシリンが効く菌を「ペニシリン感受性菌」、元々は効いていたのに効かなくなった菌を「ペニシリン耐性菌」、ペニシリン以外にも効かない薬剤があるもの(multi drug resistance)を「多剤耐性菌」「多剤耐性ウイルス」「多剤耐性がん細胞」と呼びます。ちなみに、ある薬剤が効かない菌などがその薬剤と似ている分子構造の薬にも効かない場合を「交差耐性」と言います。

★従来からある「多剤耐性菌」に対する考え方★

無断転載ですが、日本テレビのニュースに対する解説記事をコピペで写し取ったものをPDFに変換してみました。
日本テレビの「多剤耐性菌が何故できるか?」のニュース解説 一応、従来からある説は「やたらと抗生物質を使いすぎるから、色々な抗生物質が効かない菌だけが生き残って増殖する」という点では、正しいのですが、この説は「薬剤に対する耐性は、色々な抗生物質などを人間が発明して、使った結果、それに耐えられるように突然変異で進化してしまった」という考え方に基づいています。ところが、まったく別の説がここ10年くらいの間に有力になってきました。ヽ(’’)

★現在の多剤耐性菌に対する基本的な認識★

さて、おいらも抗菌薬を使いすぎる→抗菌薬に対する耐性を突然変異(多細胞生物と違って、単細胞の細菌類は変異or進化しやすい)で獲得→他の細菌類が死滅して、耐性を持った細菌類が増殖する→多剤耐性菌ができる。と思っていました。(^^;
ところが、2006年4月、農水省の独立行政法人・農業・食品総合研究機構に見学に行ったときに、研究員の獣医さんで、この「多剤耐性問題」を研究している人がいたので、質問したところ「そういう説が一般的なんですけどね。実際には薬物を投与するから、多剤耐性菌が出来るんじゃなくて、元々自然界に多剤耐性菌があるんです!いくら人間が新しい薬を発明しても、どういう訳かどっかしらの土の中や沼・海などで自然界から多剤耐性菌が見つかってしまうんですよ!」
そう言えば『人類が人工的に作った最強の毒物』と云われた除草剤・ダイオキシンも、つい10年ほど前に地下深くをボーリング調査していたら、自然の土の中(確か数千万年前の地層)から発見されたことがあります。
何となく、孫悟空が暴れまくっても、所詮釈迦の手の中だった。。みたいな感じで、人間が何をつくろうとも、所詮は”宇宙も含めた自然界に、元々どっかしらにはあるものを偶然合成できたに過ぎない”感じがします。(^^;
今回のスーパー多剤耐性遺伝子・NDM−1も、人類が病原菌の中から発見したという論文は、2010年8月、英国の研究者が「インドで見つかった多剤耐性菌と同じ遺伝子を持つ多剤耐性菌が、伝播ルートが分かっていないのに、英国でも多数見つかった」という論文を発表してから、
(NHK教育・サイエンスゼロ放送の図をおいらがテレビの画面を写真に撮ったもの)
世界中の研究者・医師が注目するようになったのですが、この「NDM−1」というほとんど、現在ある抗菌薬の全てに耐えられるという遺伝子を持った細菌類が、既に日本の東大・大気海洋研究所の木暮一啓教授によって、2007年に静岡県の沖300kmの海の中から発見されていました(・・)
つまり、この「全ての抗菌剤が効かない、スーパー多剤耐性遺伝子NDM−1も元々人間が発見する前から・あるいは人間が文明をもって、薬というものを発明する前から、自然界に存在した」ということになります!!ヽ(’’)
同教授によると「元々、(抗生物質を始めとする抗菌剤というのは、人間が自然界にあるカビなどから発見して合成したものなので)自然界では微生物も生き残りをかけて、他の細菌類と熾烈な戦いをやっている訳であるから、全ての抗菌剤に耐えられる遺伝子を持った細菌類が居てもおかしくは無い」(以上の話は、NHK教育・サイエンスゼロ2010年11月13日放送分から抜粋)
ということです。何か、人間の浅はかさというか、小ささを感じる事態ではあります。(^^;

★そして、分かってきた他の細菌に移動する恐怖の”スーパー多剤耐性遺伝子”NDM−1★

まず、現在知られている多剤耐性病原体は、NDM−1を含まないものもカウントすると、代表的なものは、以下の種類があります。
(国立感染症研究所資料より転載)
少し専門的な書き方のようなので、WIKIの記事の記載を転載すると、
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)
バンコマイシン低度耐性黄色ブドウ球菌(VISA)
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)
多剤耐性緑膿菌(MDRP)
多剤耐性結核菌(MDR-TB)
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)
βラクタマーゼ陰性アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)
広範囲薬剤耐性結核菌(XDR-TB)
ペニシリナーゼ産生淋菌(PPNG)
薬剤耐性HIV
アマンタジン耐性インフルエンザウイルス
タミフル耐性インフルエンザウイルス
クロロキン耐性マラリア
ニューデリー・メタロベータラクタマーゼ1(NDM-1)
アシネトバクター菌(MRAB)

などがあります。

他にも、Nature 446, 7137 (Apr 2007)
Highlights: 細胞:多剤耐性の機構
多剤耐性機構は、抗生物質や抗真菌剤、抗マラリア薬、除草剤、さらにはヒトで使われる抗癌化学療法剤に至る広範な薬剤に対して働くが、その大半には細胞から薬物を排出するトランスポーターが関与している。このようなトランスポーターの原型である哺乳類のP-糖タンパク質は、数十年間にわたって徹底的に研究されてきたが、機構を理解するのに十分な構造的、生化学的なデータが得られるようになったのは、ここ数年のことである。今週号ではC Higginsが、主な4つのクラスの多剤排出トランスポーターに関する現在までに得られた知識を概説している。この4つのクラスの相違点と類似点から、多剤耐性がどうやって獲得されるのかについて新たな考察が行える。こうした研究は臨床分野の差し迫った問題を解決するところまでは行っていないが、多剤耐性を克服または回避するための戦略への道を開いてくれると思われる。

など、マラリア原虫(リケッチアとアメーバの中間くらいの原生動物)、水虫(真菌・カビ類)などにも多剤耐性の種類が出ていることが分かります。ヽ(’’)

人類は、これらの病原体(カビなどの菌類・動き回る微生物・ウイルス・アメーバ・マラリア・リケッチアなどの原生動物・ガン細胞など多種あるため、一応総称して病原体と呼びます)に対して、 抗菌薬(抗生物質など)の発見・発明によって対抗してきました。「人類の寿命は抗生物質のおかげで延びた!」という学者もいるほどです。
今ある抗生物質の種類だけでも、

・分子構造による分類
β-ラクタム系
ペニシリン系 (PCs)
βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系
セフェム系 (Ceph)
βラクタマーゼ阻害剤配合セフェム系
カルバペネム系
モノバクタム系
アミノグリコシド系
テトラサイクリン系
クロラムフェニコール系
マクロライド系
14員環マクロライド
含窒素15員環マクロライド
16員環マクロライド
ケトライド系…マクロライドに似る。
ポリエンマクロライド系…真菌に対して使用。
グリコペプチド系…抗MRSA薬。グラム陽性球菌のみに有効。
核酸系
ポリミキシン系
キノロン系…正しくは合成抗菌剤
サルファ剤…正しくは合成抗菌剤
・作用機序(どのように効くのか)による分類
DNA合成阻害
RNA合成阻害
蛋白質合成阻害
細胞壁合成阻害
細胞膜変質
代謝阻害
・その他
抗癌抗生物質
マイトマイシンC
ブレオマイシン

実際の薬品名はこの数10倍はあります。また、ペニシリンのように100%自然にあるカビから抽出した物質を元に合成(ペニシリン自体も天然のカビから作られている訳ではなく、化学的に分子構造を解析して石油などから合成されている) されたものだけではなく、ほとんどは天然の物質で病原体に有効なものを発見する→その分子構造を解析する→さらにその化学物質を土台にしてその分子構造の一部をコンピューターでシュミレーションして変え(化学修飾とか分子修飾という)、他の病原体にも効くように合成したもの
などです。例えばペニシリンで説明すると、

ペニシリンvは最初に発見された天然物のペニシリンを解析して合成して作られたペニシリンです。このペニシリンが「薬としての効き目」を持つためには、骨格となる分子構造「βラクタム環」と呼ばれる部分は崩せません。で、ペニシリンとは別の病原体にも効き目があるように、「βラクタム環」以外の部分を、分子構造を変えて合成されたのが、チカルシリンという抗生物質です。
この「βラクタム環」を持つ抗生物質は、病原体が細胞膜を作るのを邪魔して壊してしまう「細胞壁合成阻害剤」になります。
このチカルシリンは合成物ですから、天然には存在しないはずですが、NDM−1遺伝子を持った病原体には効かないのです。

厚生労働省・国立感染症研究所の見解では、このNDM−1遺伝子を持つ細菌の特徴として
1. カルバペネムなどの広域β-ラクタム薬を分解するNDM-1と呼ばれる*1メタロ-β-ラクタマーゼを産生する。
2. CMY-4やCTX-M-15などの別種の*1β-ラクタマーゼを産生する。
3. RmtB やRmtCなどの16S rRNAメチレースを産生する株がある。
4. 大腸菌や肺炎桿菌などの腸内細菌科であるため、*2人の腸内や環境中に定着、生残しやすく、健常者でも尿路感染症などの原因となりうる。
5. 病原性大腸菌や近縁の腸内細菌科である、サルモネラや赤痢菌、などに、多剤耐性遺伝子が伝達する可能性もある。
*1.おいら注:βラクタマーゼ:β‐ラクタム系抗生物質を加水分解する酵素。ペニシリナーゼ (クラスA β-ラクタマーゼ) 、メタロ-β-ラクタマーゼ (クラスB β-ラクタマーゼ、亜鉛-β-ラクタマーゼ、カルバペネマーゼ)、セファロスポリナーゼ (クラスC β-ラクタマーゼ)、オキサシリナーゼ (クラスD β-ラクタマーゼ)の4種ある。 但し、これらβラクタム環分解酵素だけが”多剤耐性の原因”なのではなく、MRSAのようにペニシリン結合タンパク質の基質特異性が変化しても現れる。
*2.おいら注:つまり、日本国内で何件かこのNDM−1遺伝子を持つ細菌が発見されているということは、発症していない人の腸内で既に”ある程度の数”のスーパー多剤耐性菌が潜んでいるということを意味している。

ということです。(;;)

更に、もう一つ問題点があります。それは、製薬会社が次々と抗菌薬(抗生物質)の新規開発から撤退している。という現状です。

何故、こんな事態になったのでしょうか?それにはいくつかの理由があります。
1.慢性病と異なり、抗菌薬である抗生物質は患者が何十年も飲み続けるものではなく、長くとも1週間とか2週間くらいで、飲まなくなる。→市場規模が小さい。
2.発見あるいは人工的な合成から実際に患者に投与して効くかどうかの治験データーがそろい、医薬品として認可されるまで、20年以上かかることがあり、製薬会社も企業であるので、採算が採れない。

ということがあります。例えば日本で合成された世界で最も新しい抗生物質は、ペニシリンのβラクタム環をベースにコンピューターで分子構造を解析して、合成したものですが、最初に合成に成功したのが1991年!発売は2000年代に入ってからという状況です。その製薬会社でも経営上こうした「抗生物質の創薬部門」から撤退を決めました。

また、こんな報道もあります。
「感覚で投与」?畜産農家が抗生物質を大量に使用=人体に耐性菌ができる主因の1つに―中国 Record China 2010・11月28日(日)10時3分配信
2010年11月25日、人民網によると、食用肉に含まれる抗生物質が、抗生物質を分解してしまう 耐性菌を人間の体内に発生させる主因の1つとなっているという。 記事によると、広東省広州市の病院で体重わずか650グラムの25週間の未熟児が生まれたが、その新生児にはセフェム系抗生物質が効かないことがわかった。改良型を次々と試したがそれらもすべて効かず、結局、その他の強力な抗生物質も合わせて7種の抗生物質に耐性ができていたことがわかったという。 新生児の薬に対する耐性は、母体からくるというのが定説。妊婦が大量の抗生物質が残留した食肉類を摂取した場合、新生児に耐性が生じる可能性が高いという。中国社会科学院・農村発展所が山東省、遼寧省などの畜産農家に対して調査を行ったところ、多くの農家が食用豚大部分感染症を防ぐために人工飼料を使用しているが、50%の農家は飼料に抗生剤、ホルモン剤など薬物を添加しているという。 農家らは、家畜の伝染性疾病を非常に恐れるため、経験や感覚で投薬する傾向が強く、それにより容易に基準値を超えた抗生物質が残留することになる、と記事は指摘。中国でも飼料に添加する抗生物質の分量が厳格に規定されているが、問題は、それが守られていないことだという。農家のなかには、副作用が強すぎて販売が禁止されている抗生物質を大量に使用し、家畜を薬物投与過多で死なせるケースもあるという。(翻訳・編集/津野尾)」


またしても中国か〜!!もう、中国製の冷凍食品は買えんな!という感じです(#−−)
★報道から見る”多剤耐性遺伝子”を持つ細菌の状況★

 さて、多剤耐性を発現させる遺伝子はNDM−1(正確にはNDM−1産生遺伝子)だけではありません。現在世界で把握されているだけでも、次のような種類があります。

では、何故NDM−1産生遺伝子を持つ細菌がクローズアップされているのでしょう?その理由は
1.他の多剤耐性菌はまだ多少は効き目のある抗生物質が存在するが、NDM−1産生遺伝子はほとんど全ての抗生物質が効かないこと。特に”最強の抗生物質・カルバペネム”がまったく効かないこと。
2.このNDM−1産生遺伝子は他の細菌にこの遺伝子を移してしまう特性があり、より重篤な病原体も今後NDM−1産生遺伝子を獲得してしまう可能性があること。

つまり、今はまだ、免疫や体力の衰えた人くらいしか発症しない(それでも問題はあるが)毒性の弱い菌でNDM−1産生遺伝子が見つかっている程度ですが、この遺伝子がもっと強毒性の細菌やウイルスに転移したら、大変な(多分、社会的にパニックになるようなバイオ・ハザードになる)事態になるということです!!(−−;)

の2点です。ヽ(’’)

上の画像は2010年11月13日放送分のNHK教育TV「サイエンスゼロ」で放送されたものを、携帯で写真に撮ったものですが、真ん中の「NDM−1産生肺炎桿菌」の中身の図の「プラスミド」と書いてある小さな赤い部分にこの「NDM−1産生遺伝子」があります。そして、他の病原体と接触すると、この「NDM−1産生遺伝子」をコピーしてあげてしまう。という”自分の種類だけ生き残れば良い”病原体としては、”他の病原体も多剤耐性にして、みんなで生き残ろう”としているようで、今時の”自分だけ、自分の会社だけ儲かれば人類社会全体のことはどうでも良い”という世の中に対する”痛烈な自然からの皮肉・揶揄”とも取れなくはありません。(^^;

では、新聞などの報道で、今回の”多剤耐性問題”を見て見ましょう!
「「多剤耐性緑膿菌」全国の基幹病院86%で検出 2007・3月15日11時7分配信 読売新聞
 抗生物質が効かない「多剤耐性緑膿(のう)菌」が2003年から3年半の間に、全国の86%の基幹病院で検出されたことが、厚生労働省研究班(主任研究者=荒川宜親・国立感染症研究所細菌第二部部長)の調査でわかった。  15日に開かれた厚労省の「院内感染対策中央会議」で公表された。
 研究班は昨年、国立病院機構や大学病院など全国の538の基幹病院にアンケートを行い、339病院から回答を得た。  その結果、治療に使われる3種類の抗生物質がすべて効かない多剤耐性緑膿菌が検出された病院数は、2003年が236施設、 04年が246施設、05年が246施設あった。3年半で多剤耐性緑膿菌が1度でも検出された病院は291施設に上った。」


「結核検診、維持できるか 相次ぐ病床閉鎖…地域偏在 2009・2月5日13時53分配信 産経新聞
 かつて日本の国民病といわれた結核。医学の進歩により患者数は激減したが、通常の抗生剤が効かない多剤耐性の結核患者が大都市を中心に報告されている。その一方で、経営難から結核病床を閉鎖する病院が相次いでおり、診療体制を維持できるか懸念されている。(杉浦美香)
 東京都清瀬市の複十字病院。結核患者の病棟で53歳の男性が退院のための荷造りをしていた。入院したのは昨年8月。春ごろから食べられなくなってやせ始め、当時60キロあった体重は40キロまで落ちた。ストレスによる拒食症を疑い診療所に行ったところ、結核であることが判明した。  「病院にほとんどかかったことがなく、結核を疑いもしなかった。深夜、サウナや漫画喫茶で過ごしたりしていたから、そこで感染したのだろうか…」と首をかしげる。  結核が蔓延(まんえん)していた昭和20年代を過ごした60、70代では再発の場合が多いが、50代は新規感染者であることが多い。
 入院して1週間という都内に住むフィリピン人女性(23)は、マスクごしにつらそうにせきをしながら「眠れなくてつらい。早く家に帰りたい」と訴えた。  2年前に来日。スナックで働いていたがせきが止まらず、診療所を受診、風邪と診断された。薬で一時おさまったが、再びせきが止まらず別の診療所にかかり、結核であることがわかった。  訪れたとき、48人の患者が入院していたがうち4人が外国籍。結核の罹(り)患(かん)率が高い国の出身者の場合、母国で感染して来日するケースが多いという。うち1人は多剤耐性だった。
 結核を完治するためには複数の抗生剤を6〜9カ月にわたり、飲み続けなければならない。途中で服薬をやめると、薬が効かない多剤耐性へと移行する危険性が強い。全く効かない超多剤耐性の患者も報告されている。しかし、最近、最初から多剤耐性にかかっている例が珍しくないという。  「高校生の多剤耐性の患者もいた。感染経路を特定するのは不可能に近い。結核は空気感染のため、不特定多数の人が集う場所では常に感染リスクがある。感染を恐れるのではなく、健診などで患者を早期発見して治療してもらい、感染を広げないようにするのが重要です」と吉山崇・呼吸器内科部長(46)は指摘する。
     ◇
 日本の新規の結核感染者数は2万5311人(平成19年)。結核予防法が制定された昭和26年当時、59万人もいたが、集団検診体制が整い、特効薬のストレプトマイシン(抗生剤)の登場で感染者は30年代ごろから激減。平成9年に一転、増え始めたが政府の「結核緊急宣言」が功を奏し、12年には再び減少に転じた。しかし、先進国の中では依然罹患率は高く、米国の4・4倍。日本は「中程度蔓延国」だ。20代の新規感染者のうち5人に1人が外国籍、ホームレスなどの日雇い労働者も2割近くいた。
     ◇
 懸念されるのは結核の医療体制だ。東京都では昨年10月、日産厚生会玉川病院(世田谷区)が結核病棟(60床)を閉鎖。今年3月には、民生委員が結核患者のアフターケアのために昭和31年に開設した薫風園病院(清瀬市)も病院自体を閉鎖する。  神奈川県では昨年12月、横浜市の国立病院機構南横浜病院(150床)が廃止になった。患者減少に伴い、赤字経営が続いたのが大きな理由だ。県健康増進課は「結核病床の稼働率は約5割で今すぐ足りなくなるわけではないが、横浜市に病院が集中しており、地域偏在がある」と問題点を指摘する。埼玉県でも、川口市の益子病院が3月、結核治療に携わってきた医師の後継者が見つからず結核病棟(32床)を廃止する。埼玉県は昨年5月、国に結核病床の補助を求める要望書を提出した。  複十字病院の工藤翔二院長(66)は「保健点数が抑えられているため、結核患者1人あたり40万円、年間1億2000万円の赤字になる。全国どこの民間病院も結核病床を維持するのは厳しいのが現実だ」と話す。  国立病院も独立行政法人化に伴い、採算性を求められるようになってきている。人材不足も深刻で、結核を診察したことがない医師もおり、患者の早期発見を遅らせることにもつながっている。  結核予防会結核研究所の加藤誠也副所長は「厚生労働省の結核部会で、地域の結核医療の実態について調査、検討しているところだ。長期の視点にたって結核医療を考え直す必要がある」としている。」


「薬効かない結核、58カ国で確認=WHO 2010・3月19日5時54分配信 時事通信
 【ジュネーブ時事】世界保健機関(WHO)は18日、従来の薬による治療が極めて困難な「超多剤耐性」(XDR)結核の感染が今年3月時点で、世界58カ国で確認されたと発表した。XDR結核の感染者は推定で、年間2万5000人に上るとした。  また、XDRを含めた、薬による治療が難しい「多剤耐性」(MDR)結核の感染者は08年で年間44万人、死者は15万人に上ったと推計した。」


  「<多剤耐性菌>アシネトバクター 強い「生命力」で拡大 毎日新聞 2010・9月9日(木)8時25分配信
 帝京大病院(東京都板橋区)を皮切りに、次々と明らかになった多剤耐性菌アシネトバクターの院内感染。感染拡大の原因として、病院側の認識の甘さや報告の遅れなどが問題視されているが、専門家は対策が難しい同菌の特性も一因に挙げ、今後も感染が相次いで発覚する可能性を指摘する。これまで打ち出されてきた国の院内感染対策も、十分とは言い難いのが実情だ。【佐々木洋、福永方人】
 ◇乾燥に耐え生存 帝京大では2度沈静傾向に
 「アシネトバクターは高度耐性菌の中でも『生命力』が強く、対策は非常に難しい」。自治医科大病院の森沢雄司・感染制御部長は指摘する。感染が収まったように見えても、病院内のさまざまな場所で菌が生き延び、再び感染が拡大する恐れがあるという。  帝京大病院では今年2月、4人の感染者が出たが、3月には1人に減少。同病院感染制御部の対応は、院内各科に通知を出すなどして注意を呼びかけるにとどまった。しかし、4月から5月初めにかけ、一気に約10人が感染し、同病院は初めて「院内感染」と認識。全感染者を個室で管理し、病棟を一時閉鎖するなど、拡大防止に乗り出した。  その後、6月には6人の感染者が出たものの、7月は1人で同月末時点での保菌者は計3人に減り、沈静化したように見えた。同病院は8月4日に厚生労働省と東京都の定期検査を受けたが、院内感染については報告しなかった。都の担当者は「定期検査の時点では院内感染は終息傾向にあると判断し、報告しなかったのだろう」と見る。  しかし、8月に同病院が精度の高い手法で全病棟を検査したところ、新たに7人の感染が確認された。結局、感染者は計53人に上り、いまだに感染は終息していない。  一方、3人の感染者が出た都健康長寿医療センター。このうち76歳の男性は今年2月、帝京大病院から転院した。転院約2週間前の検査ではアシネトバクターは陰性だったが、転院当日の同センターでの検査では陽性となった。  帝京大病院は「転院までの2週間で感染した可能性はゼロではない」と話す。
 こうした状況について森沢部長は「例えば緑膿(りょくのう)菌は乾燥に弱く、水回りの対策で済む。しかし、アシネトバクターは乾燥に強く、床やカーテン、パソコンのキーボードなど通常の環境でも数週間以上生存する。病室などを1回調査しただけで、菌の有無を判断するのは難しい」と指摘する。欧米の病院では、医療スタッフが使うPHSを介して集団感染が発生したケースもあるという。  次々と明らかになる院内感染は今後も拡大するのか。
 日本感染症学会理事の舘田一博・東邦大准教授(微生物・感染症学講座)は「院内感染をゼロに抑えるのは不可能。アシネトバクターは既に国内でも広がっていると考えられ、検査を強化すれば新たな院内感染が発覚する可能性がある。院内の監視体制を強め、菌が検出されたら速やかに保健所などに報告し、消毒で拡大を防ぐなど、本来の感染対策を改めて徹底すべきだ」と指摘する。
 ◇国の対策、後手に回る
 国の院内感染対策は、セラチア菌や多剤耐性緑膿菌などによる集団感染が問題化するたび、法律・省令の改正や、自治体への通知などによる対応を繰り返してきた。後手に回ってきた感は否めず、感染症対策のスタッフの少なさの解消など抜本的な対策は先送りにされてきたのが実情だ。  国は04年1月、大学病院などの特定機能病院について、省令改正で専門知識を持つ専任の担当者を置くことを義務化。07年4月施行の改正医療法では、診療所などを含めたすべての医療機関に院内感染マニュアルの策定を義務づけるなど、医療機関の安全対策に院内感染対策を初めて明確に位置づけた。  アシネトバクターを巡っては、福岡大病院の院内感染を受け、09年1月、厚労省が対策を求める通知を都道府県に出した。しかし、帝京大病院では、感染制御部の医師らが通知を知りながら素早い対策を取らずに被害を拡大させ、保健所への報告も遅れた。このため厚労省は今月6日、改めて対策の徹底を求める通知を出した。  帝京大病院の対応について厚労省の担当者は「専任職員といっても、どの程度機能していたかは今後の調査次第。医療機関ごとに相当意識の差がある可能性もある。行政への届け出の遅れは、感染症法の報告義務対象になっていなかったからではないか」とみる。  同法では、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌など5種類の耐性菌について発生時の報告を義務づけているが、アシネトバクターは対象外だった。このため長妻昭厚労相は独協医大病院で国内初確認された「NDM1」も含め、届け出対象に含めるか検討を指示した。新しい耐性菌の広がりを把握するため、全国的な調査に乗り出す方針も固めた。  感染症専門医の少なさなど、欧米に比べ遅れが指摘されていた日本の院内感染対策。長妻厚労相は7日の会見で「専門家の意見も聞きながら実態把握を進め、これを機に対策を徹底したい」と語った。」


「2人死亡、多剤耐性菌原因か=都内の病院、患者8人から検出−病院側は院内感染否定 時事通信 2010・9月8日(水)10時19分配信
 多剤耐性菌アシネトバクターの院内感染問題で、東京都世田谷区の「有隣病院」(橋本康男病院長)でも院内感染が発生し、少なくとも2人が感染が原因で死亡した疑いのあることが8日、分かった。都が医療法に基づき、同日までに立ち入り検査した。  都によると、有隣病院では2〜7月にかけ、59〜100歳の入院患者で男女計8人からアシネトバクターが検出された。5人は同一病棟に入院しており、院内感染が疑われるとしている。  8人のうち4人が死亡し、2人については病歴などから、アシネトバクターとの因果関係を否定できないという。
 都は今月7日に緊急立ち入り検査を実施。「感染例が5月に5件も集中し、同じ病棟から感染者が多く出ており、院内感染の可能性が高い」としている。  一方、有隣病院の橋本病院長は8日、同病院で記者会見し、患者の入院期間や病室などから、院内感染との見方を否定した。同病院長は「世間を騒がせたことは遺憾に思う」と話した。」


さて、ここで、いくつかの問題点が浮かび上がってきました。ヽ(’’)
1.現在、スーパー多剤耐性遺伝子を持つ種類があることが確認されている「アシネトバクター菌」というのは、実は適当に湿り気のある家庭の台所など、どこにでもいるありふれた細菌で免疫の弱い子供や体力の落ちている病人・高齢者などしか、普通は発症しない菌です(日和見感染)。その家庭内にいるアシネトバクターの中に、既に「NDM−1産生遺伝子」を獲得しているものがあったとしたら?体力のある大人の腸内で、発症せずに生き延びて、体力の落ちたある時、突然に発症する危険性もあります。
2.「院内感染」の場合もこのアシネトバクターの場合は、上の理由から感染経路を突き止めるのはかなり難しいと思われます。
3.健康保険の点数を抑えるように厚生労働省が医療保険改悪をしてしまったため、一生懸命治療するほど赤字になる。
4.医療スタッフ自体が人材不足に陥っているため、充分な院内感染対策を取れない。
ということです。(>_<)

グラム陰性桿菌の中にはこんな危険な”人食いバクテリア”も!!

・下のQ&Aはテレビで”恐怖の人食いバクテリア”とかいう特集をやっていたときに、気になって国立感染症研究所のHPで調べたものです。
何故、テレビで”人食いバクテリア”と呼んだかというと、感染した人の細胞をまさに”餌”として食べてしまうからです。
Q.ビブリオ・バルニフィカスとは?
 腸炎ビブリオやコレラ菌などと同じビブリオ科に属し、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)と性状などで共通点も多いグラム陰性桿菌です。ビブリオ・バルニフィカス(V. vulnificus)の名前はこの菌が創傷(wound=vulnus)を起こすことに由来しています。
主に暖かい海水中の甲殻類や魚介類の表面や動物性プランクトンなどに付着しつつ増殖し、周囲の海水中にも遊出します。2〜3%の塩分濃度で良く増殖し、汚染された魚介類の摂取や皮膚の創傷などから人に感染します。

Q.どのような症状をおこし、どのくらいの症例があるか教えてください
 健常者では下痢や腹痛を起こすこともありますが、重症になることはほとんどありません。しかし、免疫力の低下している人や特に肝硬変などの重大な肝臓疾患のある人なとでは注意が必要となります。また、治療のために鉄剤の投与を受けている貧血患者も注意が必要という指摘もあります(医系微生物学:朝倉書店、初版本p.211)。肝臓でのクリアランスの低下や、血清鉄が細菌の病原性や増殖性を増すことなどから、細菌が血液中に侵入し、数時間から1日の潜伏期の後、峰巣炎等の皮膚病変の拡大や、発熱、悪寒、血圧の低下などの敗血症様症状を起こし、生命を脅かすことがあります。この細菌が血行性に全身性感染をおこした場合、致死率は50〜70%と非常に高くなります。
 米国ではメキシコ湾沿岸の州を中心に1988年から1995年までに300例以上の報告があります。国内でも現在までに分かっているだけでも100例以上が報告されています。

Q. 治療・予防方法を教えてください
 治療は補液や抗菌薬による治療が中心となります。米国ではドキシサイクリンや第3世代セフェム薬剤が使用されます。国内でも、同様に第3世代セフェム薬剤やテトラサイクリンなどで胆汁排泄型の薬剤が効果があると言われていますが、病状が進行してからの投与は無効です。ハイリスクの人が生鮮魚介類を生食後、体調に不調を感じたら直ちに医療機関にかかることが重要です。   我が国では刺身や寿司等の材料となる多くの魚介類の摂取が原因となっていますので、肝臓障害をもつ当疾患に対するリスクの高い人は、生の魚介類を控えた方が良いでしょう。一方、欧米での原因の多くは、生牡蠣の摂取です。  予防方法としては、肝臓障害をもつ当疾患に対するリスクの高い人は、夏季に生牡蠣や十分調理されていない魚および貝類を食べないようにする。貝を煮るときには貝が開いてからも5分間、蒸す場合には9分間以上の調理を行う。開かない貝は食べないようにする。むき身の牡蠣は3分間以上ゆでるか、191℃で10分間以上油で焼く。調理済みの食品が他の生の魚介類からの汚染を防ぐ(まな板など)ようにする。調理したらすぐに食べるなどの点に注意が必要です。    創傷があるときは暖かい海水や汚れた水が、傷に付着するのを防ぐなどの防御法をとることが必要となります。海岸や岩場で裸足で歩いて貝の殻などで怪我をし感染したと思われる事例も過去にありますので、ハイリスクの人は海岸での素足歩きは禁物です。
(国立感染症研究所 感染症情報センター・細菌部・細菌血液製剤部)


 医学会ではこのスーパー多剤耐性・NDM−1産生遺伝子保有菌について、どのように見ているのでしょうか?まずは、「日本感染症学会」のコメントです。
NDM-1およびNDM-1産生菌の特徴
1.NDM-1はβラクタム剤を分解するβラクタマーゼの1つです。
細菌はβラクタム剤を分解する酵素(βラクタマーゼ)を産生することにより本剤に対して耐性を獲得します。そのβラクタマーゼには多数の種類が知られていますが、この中でNDM-1はクラスBβラクタマーゼ(メタロβラクタマーゼ)に分類されるものの1つです。本酵素のもっとも重要な特徴は、ペニシリン・セフェム剤からカルバペネム剤まで全てのβラクタム剤を分解する、すなわちβラクタム剤全てに耐性をもたらす耐性因子であることです。

2.インド・パキスタン・バングラデシュなどでNDM-1産生菌の出現が報告されています。
NDM-1を産生する菌は、2009年にインドから帰国したスェーデン人からはじめて分離されました(Antimicrob Agents Chemother 53:5046-54, 2009)。その後の報告で、インドやパキスタン・バングラデッシュにおいてNDM-1産生菌が蔓延している可能性が指摘されています(Lancet Infect Dis 10:597-602, 2010)。NDM-1の名前の由来は、“ニューデリーで分離されたメタロβラクタマーゼ(New Delhi metallo-β-lactamase)”からきています。インドに旅行した人が持ち込んだと思われるNDM-1産生菌がイギリス国内で拡散し、大きな社会問題として取り上げられています。この他、米国、オーストラリア、カナダ、ベルギーなどでも相次いで分離が報告され世界的な問題として認識されつつあります。

3.NDM-1と同じクラスのβラクタマーゼを産生する菌はすでに日本で多数報告されています。
前述したようにNDM-1はメタロβラクタマーゼの1つです。実はこのメタロβラクタマーゼを産生する菌はこれまでに本邦においても多数報告されていました。もっとも多く報告されているメタロβラクタマーゼ産生菌は緑膿菌とアシネトバクターであり、特に多剤耐性緑膿菌においてはその70%がメタロβラクタマーゼ産生との報告もみられます。ただし、緑膿菌が保有するメタロβラクタマーゼはIMP型あるいはVIM型と呼ばれるもので、今回問題となっているNDM-1を産生する緑膿菌は本邦では分離されていません。

4.NDM-1遺伝子が大腸菌や肺炎桿菌から検出されていることが問題です。
今回のNDM-1産生菌報道においてもっとも重要なポイントは、この酵素を産生する菌が大腸菌や肺炎桿菌から分離されている点です。これまでもメタロβラクタマーゼを産生する菌が分離されていたことは上述した通りですが、それは主に緑膿菌やアシネトバクターなどの日和見細菌に認められていました。大腸菌や肺炎桿菌はこれら日和見細菌に比べ病原性が高く、市中の免疫能が保たれた患者の感染症の起因菌としてしばしば分離されます。また、大腸菌や肺炎桿菌は腸内細菌としてヒトの腸管内に常在している細菌です。このような事実から、NDM-1産生菌が院内だけでなく、市中感染として蔓延していくことが危惧されています。腸内細菌におけるNDM-1産生菌の出現が、自然界におけるメタロβラクタマーゼ遺伝子の蔓延のきっかけになるのではないかと心配されているのです。

5.NDM-1産生菌に感染した人の死亡率が高い訳ではありません。
NDM-1産生菌の病原性が通常の菌に比べて明らかに高いという報告は現時点ではありません。“スーパー細菌”という表現がみられますが、NDM-1遺伝子の存在は薬剤耐性に関して多剤耐性という特徴を付与しますが、基本的に病原性を変えるものではありません。しかも、感染する人の多くが健常人であり、宿主の感染防御能が保たれていることも幸いします。ただし、免疫不全宿主にNDM-1産生菌が感染した場合には、日和見感染症の1つとして治療に抵抗性を示す可能性は高まります。また、NDM-1遺伝子がサルモネラ菌や赤痢菌などのより病原性が強い菌に伝播・蔓延した場合には、重症・難治例が増加するのではないかと危惧されています。

6.NDM-1産生菌の検出には注意する必要があります。
前述したように、NDM-1はメタロβラクタマーゼの1つです。通常、メタロβラクタマーゼの検出にはSMA試験(メルカプト酢酸ナトリウムによるメタロβラクタマーゼの阻害)が用いられます。しかし、まだ理由は良く分かっていませんが、NDM-1産生菌ではSMA試験が陰性になる可能性が指摘されています。したがって、大腸菌や肺炎桿菌などの腸内細菌科でカルバペネム剤に耐性を示す株が分離された場合には、たとえSMA試験が陰性であっても、NDM-1産生の可能性を考えて対応することが重要です。NDM-1産生菌かどうかの最終的な確認のためには専門施設での遺伝子検査が必要になります。

7.NDM-1産生菌に対してはコリスチン・チゲサイクリンの抗菌活性が強いです。
これまでに分離されたほとんどのNDM-1産生菌は、他の耐性遺伝子を同時に保有することでカルバペネム剤を含む全てのβラクタム剤に耐性であるとともに、アミノグリコシド剤やフルオロキノロン剤に対しても同時に耐性を示すことが報告されています。前述したように、NDM-1産生菌による感染症の多くが健常人における市中感染としてみられることから、中等度耐性程度の薬剤であっても臨床効果が期待できる可能性があります。分離された菌の抗菌薬感受性をみながら、併用療法などを考慮することも重要です。これまでに報告されたNDM-1産生株の薬剤感受性成績からは、本邦では未承認のコリスチンやチゲサイクリンの強い抗菌活性が確認されています。

8.インド・パキスタン・バングラデッシュなどからの帰国者には注意する必要があります。
前述したように、NDM-1産生菌の多くは大腸菌や肺炎桿菌です。こられの細菌は腸内の常在細菌叢を形成する細菌であり、知らず知らずのうちに宿主の腸管内に紛れて国内に持ち込まれる可能性があります。インド・パキスタン・バングラデッシュなどの流行地からの帰国者は、NDM-1産生菌を腸管内に保菌している可能性も考えておく必要があります。腸管内のNDM-1産生菌がすぐに感染症の原因にはなりませんが、糞便などを介して本菌が伝播される可能性はあります。NDM-1産生菌に対する院内感染対策として特別なものはありません。手洗いや手袋の適切な使用など標準予防策の徹底がもっとも重要であり、もしNDM-1産生菌が分離された場合には他の多剤耐性菌と同様に接触感染予防策の対象となります。

9.NDM-1産生菌のサーベイランスが必要です。
現時点での本邦におけるNDM-1産生菌の分離は1例のみです(2010年9月8日現在)。しかし、前述したように、NDM-1産生株が人の腸管内に潜在してすでに多数持ち込まれている可能性も否定できません。NDM-1産生株の分離頻度がこれからどのように推移していくのか、他の細菌へのNDM-1遺伝子の蔓延が進行しないか、施設・地域そして全国規模の耐性菌サーベイランスを強化・徹底していくことが重要になると思われます。

2010年9月8日
多剤耐性菌院内感染対策ワーキンググループ
賀来 満夫
舘田 一博

また、医学会の中で感染症に関わり合いのある4つの団体・社団法人日本感染症学会、社団法人日本化学療法学会、日本環境感染学会、日本臨床微生物学会から提言が発表されています。ヽ(’’)
多剤耐性アシネトバクター感染症に関する 四学会からの提言
はじめに
 近年、多剤耐性アシネトバクターによる院内感染事例が我が国でも散発的に発生し、2010年9月には大学病院での事例が各種報道でも大きく取り上げられました。さらにNDM-1産生菌に代表される新しい耐性菌の本邦における検出例も報告され、日本中がその動向を注目している状況です。このような中で、感染症にかかわる各学会は、それぞれの特性を生かした提言やコメントを発信してまいりました。このたび、感染症関連の四学会(社団法人日本感染症学会、社団法人日本化学療法学会、日本環境感染学会、日本臨床微生物学会)は、我が国における多剤耐性アシネトバクター感染症の感染拡大防止、適正な診断と治療を促進することを目的に、現時点における問題点、将来に向けた改善点を提言としてまとめました。

提言
1.多剤耐性の定義を決める必要があります
 本菌感染症の発症状況を正確に把握するためにも、アシネトバクター属細菌における多剤耐性の定義を早急に決める必要があります。米国臨床・検査標準協会(Clinical and Laboratory Standards Institute, CLSI)や欧州抗菌薬感受性試験法検討委員会(The European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing, EUCAST)が耐性菌のブレイクポイントを設定中ですが、本邦の耐性菌の頻度あるいは使用抗菌薬などを参考に独自の基準を考えながら、欧米との協調を探っていく必要があります。特に本菌をいわゆる5類感染症として定点把握の対象とするためには行政主導、あるいは行政との連携による定義の設定が不可欠です。

2.効果的なサーベイランスの実施とその活用が急務です
 これまでにも感染症の疫学調査が多く実施されてきました。これらの成績の中には極めて重要な情報が多数含まれているものと考えられますが、その活用、臨床現場へのフィードバックに関しては、必ずしも効果的な仕組みが出来上がっているとは言えない状況です。アシネトバクターを含め、全国レベル・地域レベルでの耐性菌の分離頻度、耐性状況などの情報を、施設レベルでの耐性菌対策に活かす方法を工夫していく必要があります。この点に関して、学会と行政のさらなる連携・協力が重要かと思われます。

3.現在進行形の症例に役立つサーベイランス体制を促進する必要があります
 現在のところ、本邦における多剤耐性アシネトバクターの分離頻度は極めて低い状況にあります。したがって、1施設で短期間の間に2症例から本菌が分離された場合には院内伝播を考えて対応することが必要になります。現在進行形の症例に対して役に立つ施設内サーベイランスをどのように実施していくかについては、感染制御部(感染対策室)、診療担当医と微生物検査室との連携が極めて重要になります。また地域における発生動向などの情報共有には、行政との協力が欠かせません。

4.多剤耐性菌検査が実施できる環境整備が必要です
 前述の現在進行形の症例に役立つサーベイランスを実現するためには、各医療施設における微生物検査室の設置が前提となります。現在、専門的な微生物検査・耐性菌検査を担当できる臨床検査技師の育成が認定臨床微生物検査技師制度、あるいは感染制御認定臨床微生物検査技師制度を通して行われています。これら人材の協力のもとに、効果的な院内感染対策・耐性菌対策をサポートできる微生物検査室環境の整備と充実が重要と考えます。また、微生物検査室において新たな多剤耐性菌を検出するためには追加検査を必要とすることが多く、体外診断薬メーカーによる検査試薬の開発と供給や、診療報酬点数の加算など行政的なサポートが必須となります。

5.感染対策への十分な財政的支援が必要です
 多剤耐性アシネトバクターが分離された患者に対して、医療機関では標準予防策に加え接触感染予防策を徹底し他患者への伝播を防止する必要があります。そのためには患者を個室に配置し、医療従事者が入室のたびに使い捨て手袋やガウン・エプロンを使用しなければなりません。これらの感染防護具は「疾患の予防」の範疇になるため、診療報酬で全く手当されず、厳格な感染対策を取れば取るほど病院経営に悪影響を及ぼすのが現状です。効果的な感染対策を講じることができる体制をととのえるためにも、正当な感染対策に関する診療報酬上の評価が必須と考えます。

6.感染症診療、感染対策に従事する人材の配置と育成が重要です
 多剤耐性アシネトバクター感染症の集団発生の防止や、万一発生した場合の原因調査や再発防止策を講じ、さらに適正な診療を実施するにはこの領域の専門家が少なくとも地域の基幹医療機関には配置されていることが必要です。大学病院などの高度な医療を提供する特定機能病院や臨床研修指定病院においては複数の専従者が必要です。単位ベッドあたりの専従・専任者を十分に配置し、効果的な医療関連感染防止を実施できれば、医療関連感染を減少させ無駄な医療費を削減することができます。これらを実現するためには、感染症や感染対策の専門家の育成、システム構築のための制度改善、診療報酬の見直しなど、行政との連携した対応が重要と考えます。

7.未承認薬の早期承認が望まれます
 多剤耐性アシネトバクター感染症に対する治療薬として、国内未承認であるコリスチンやチゲサイクリンが注目を集めています。欧米では第一選択薬となっているような薬剤がなぜ本邦で使用できないのか、その早期承認に向けた関係学会と行政の連携が強く望まれています。また、これら薬剤の適正使用、副作用発現の抑制、耐性菌出現防止対策などの視点から、多剤耐性菌感染症に対する治療ガイドラインの作成などを推進していくことが必要です。

8.新しい治療薬の研究開発を促進する仕組み作りが必要です
 いかに適正使用を心がけても、早晩コリスチンやチゲサイクリンに対しても耐性菌の出現がみられることは予想されるところです。耐性菌感染症を増加させない体制作りとともに、新しい治療薬の開発・研究の促進は極めて重要な課題と思われます。しかし実際には、研究開発費と収益性の視点を含め、製薬企業にとって新しい感染症治療薬の開発に積極的に参入できる環境が整っているとは言えない状況があります。関係学会と行政は、“耐性菌感染症に対する新しい治療薬の開発”という大義に基づき、製薬企業が新薬開発に参入・継続できる仕組みを中・長期的な視点で考えていくことが必要と考えます。

2010年10月21日
社団法人日本感染症学会  理事長 岩本 愛吉
社団法人日本化学療法学会 理事長 松本 哲朗
日本環境感染学会     理事長 小西 敏郎
日本臨床微生物学会    理事長 戸塚 恭一

  ★”スーパー多剤耐性遺伝子”を持つ細菌に現在採られている対処法★

1.「60年前発見の抗生物質復活、多剤耐性菌に効く 読売新聞 2010・10月26日(火)1時48分配信
 主要な抗生物質が効かない多剤耐性菌の増加を受け、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会は25日、60年前に日本で発見され、その後使われなくなっていた抗生物質コリスチンを、多剤耐性菌への使用に限って復活させる方針を決めた。
 すでに英グラクソ・スミスクライン社が臨床試験を始めているといい、優先的に承認審査を進める。  コリスチンは1950年、福島県内で採取された土壌細菌から発見された抗生物質。大腸菌や緑膿(りょくのう)菌などに効果があるが、過剰投与すると神経障害や腎臓障害などの副作用がある。70年代まで盛んに使われたが、その後は使われなくなり、90年代に国内での製造が終了。承認も取り消された。
 だが、今年に入って、多剤耐性菌のアシネトバクターのほか、ほとんどの抗生物質を分解するNDM1酵素を持った大腸菌などが国内にも出現。多剤耐性緑膿菌も数年前から確認されていることから、これらに効くコリスチンを独自輸入する医療機関が増え、日本感染症学会などが早期承認を求めていた。」


ということで、腎臓障害を起こす確率が結構高かったので、承認を取り消された”前科”のあるコリスチンの薬品としての承認を復活させるべく、厚生労働省も動いてはいますが、先ほどの4学会の提言にもあったとおり、このコリスチンもいずれは、効かなくなる日がやってくることも、また確かなことです。(><)

colistinの分子構造

かなり、大きな分子であることが分かります。コリスチンというのは、塩基性の陽イオン性界面活性剤(つまり洗剤の一種)であり、細胞質膜を傷害することにより殺菌的に作用する。グラム陰性菌に対して優れた抗菌作用を示し、緑膿菌感染症や細菌性赤痢に対して有効ですが、腎毒性、神経毒性が強いため、注射薬としては用いられないものです。
なお、60年前に開発したのは、やはりな〜というか、1950年にライオン製薬(現ポーラファルマ)の小林細菌研究所の小山康夫、黒沢秋雄らで、福島県掛田町の土壌中の芽胞桿菌Bacillus polymyxa var. colistinusが産生する物質からです。
また、米・ワーナー・ランバート(現ファイザー)に輸出されるなど、米国を始め海外でも医薬品として発売され使用されましたが、1960年代から1970年代にかけて用いられ、副作用の頻度が高いこと、他により安全性が高い抗菌薬が開発されたことなどにより、その後日本では使用されなくなりました。現在、日本ではコリスチンは医薬品として未承認扱いとなっています。

2.細菌にだけ感染するウイルス(バクテリオ・ファージ)を利用して、多剤耐性菌を死滅させるという手も!
おいらもこの「スーパー多剤耐性菌」のニュースを聞いたときに、”自然界にある抗菌薬”を使わないで細菌類を死滅させるにはどうしたらいいのか?ということを考えている 時に、細菌類にだけ感染して死滅させてしまう「バクテリオ・ファージ」という種類のウイルス(数10種類ある)を利用して、遺伝子組み換えによってこの「バクテリオ・ファージ」が多剤耐性遺伝子を獲得することがないようにして、 ”生物薬剤”としたらどうだろう?と思いつきました。

これは”T4型”と呼ばれている「バクテリオ・ファージ」ですが、ほとんど宇宙人のような不気味な格好をしています。(^^;
ところが、医者もさるもの、ネットで調べていくうちに、既に多剤耐性菌用にこのバクテリオ・ファージを利用しようという研究は始まっていました。
WIKIの記事によると「テンペレートファージを利用して宿主の細菌に任意の遺伝子を導入する技術も開発された。この技術は形質導入と呼ばれ、ラムダファージによる大腸菌への形質導入が、分子生物学分野で繁用されている。 ファージは種類によって宿主とする細菌が異なり、しかもその選択性が高い。このため同じ種に属する細菌であっても、株によって特定のファージに感染するものとしないものがある。この現象を利用して同種の細菌をさらに細かく判別することが可能であり、この方法をファージ型別と呼ぶ。ファージ型別による分類は黄色ブドウ球菌やサルモネラに用いられており、これらの菌の中でも特に病原性の高いものであるかどうかを識別することが可能である。 またビルレントファージが宿主を溶菌によって殺す性質と、その宿主特異性の高さを利用して、細菌感染症に対する治療薬として応用する研究も行われている。現在、ロシア、ポーランドなど東ヨーロッパで本格的に実用化されていて、西ヨーロッパ、アメリカなどでは臨床実験中である。 また、薬剤耐性菌テロに対する治療薬としてロシアやアメリカなどでは研究が進められている。

おいら注:大きく分けて、「バクテリオ・ファージ」にはテンペレートファージ(ラムダファージもこの一種)とビルレントファージの2種類があり、テンペレートファージは他で獲得した遺伝子を次の宿主の細菌に移し易く、赤痢菌の遺伝子を大腸菌に移してO−157を誕生させたのも、このテンペレートファージの1種です。細菌を殺してしまう(細菌の細胞膜を溶かしてしまうことから溶融と呼ばれる)速度も殺菌率もビルレントファージの方が早い。

3.新しいワクチンの開発:抗菌剤ではなく免疫の抗体で多剤耐性菌を防ぐ。
「Translational Medicine Science2010・10月13日号: 結核の新しいスーパーワクチン New Super Vaccine for Tuberculosis 新しい結核ワクチンが、小児期のワクチンの有効性を増強し、世界的に大きな問題となっている薬剤耐性結核菌から防御することが、 動物を用いた新しい研究で報告された。現在、ヒトを対象とした臨床試験で使うワクチンの開発が行われている。もし結果が良好であれば、 このワクチンは、増加する薬剤耐性結核菌からの防御と、多くの人が世界的な公衆衛生の危機と考えている疾患の予防に有用であると考えられる。 小児期のワクチンBCGの有効性は時間の経過と共に減弱し、数十年のうちに結核菌を撃退できなくなり、成人になると疾患を予防できなくなってしまう。 今回、Sylvie Bertholetらが、Mycobacterium tuberculosis由来のタンパク質を組み合わせて作製したワクチンについて報告し、この新しいワクチンが、 小児期ワクチンの防御能を有意に増強し、さらに薬剤耐性結核菌に対する防御まで可能にしてくれることを明らかにした。 このワクチンは、 融合させ一分子とした4種類のタンパク質から構成される。それぞれのタンパク質は、実験モデルにおける結核菌の防御能に基づいて選択された。 タンパク質を組み合わせることはワクチンにとって重要である。結核菌にはさまざまな種類があるためである。全ての種に対して有効な単一のタンパク質はない。 また、誰一人として同じ人はおらず、人によってそれぞれのタンパク質に違う反応を示す。天然の結核菌に存在するものと同じようなタンパク質を組み合わせると、 ワクチンが有効となる可能性が高まる。Sylvie Bertholetらは、新しいワクチンを、マウス、モルモット、サルを用いて試験し、 この4タンパクワクチンが動物の重要な免疫細胞応答を引き起こすことを明らかにした。例えば、結核菌で汚染した空気を吸引させたマウスでは、 ワクチンによって感染が予防され、複数の汎用薬剤に耐性を示すことが知られている株の感染も予防できた。ヒトでよくみられる防御能の減弱を模倣するため、 モルモットに対する短期BCGワクチンの注射も行った。投与数ヵ月後、4タンパクワクチンは、モルモットの感染を予防し、BCGワクチンによる免疫性を効果的に増強した。」

4.病院側の取り組み:NHK教育・サイエンスゼロ2010・11・13放送分から
a.京都大学医学部付属病院での取り組み。
医師の中に「感染制御医」という担当を置く。内科・外科などの科別の縦割りとは無関係に、入院患者に処方されている薬剤を全てチェック。この「感染制御医」は京都大学医学部付属病院での過去の「どの病原体での感染に、どの薬剤が、何%の患者に効いたか?」を一覧表にして持ち歩いている。
現場の医師は、どうしても「目先の効き目」で、過去どの細菌に対しても100%効いていたカルバペネムを処方しがちなので、病原菌が特定できるまでは、”とりあえずカルバペネム”という風潮がある。
この「感染制御医」はそれをチェックして、既に何の細菌が原因なのか、特定の終わった患者に対して、漫然とカルバペネムが処方されている場合は、特定された病原菌には効くが他の病原菌には効き目が薄い抗生物質に変える様に主治医に勧告する。
ということをやって、スーパー多剤耐性菌だけが生き残ることが無いように、チェック体制を組んでいる。

b.岐阜大学医学部付属病院での取り組み。
「感染制御チーム」の立ち上げ。→「院内感染は医療スタッフが媒介して広げている」という前提に立つ。→病院の施設内のあらゆるところの細菌を採取して調査。→同じ菌が同じスタッフの出入りする場所・病室から発見されていないか?勤務シフトなども参考に調査。→特定された場合はその場所とスタッフの消毒の徹底化を命ずる。

など、様々な試みが行なわれています。ヽ(’’)
我々、一般人も安直に医師に抗生物質をねだったりせず、また「地球にはあらゆるところに細菌類がいる」ということを肝に銘じて、裸足で海岸や海に入らないように気をつける。夏場(水温20℃以上)の刺身はなるべく避ける。低体温(36.5℃以下の体温が平熱の人)気味の人は、免疫が落ちている可能性があるので、基礎代謝を上げて(軽い運動を毎日)免疫機能を高めるようにしましょう!
★2011・5更新・多剤耐性菌を建物内で増殖させないようにする1つの方法★
世の中には、色々な抗菌薬があります。様々な作動機序でウイルス・細菌を死滅させるように作られていますが、”病院や学校など建物の中で感染が拡がって行く”ということは 、”菌の付着している人が移動して広げている”ということに他なりません。この対策の一つとして、これまでの抗生物質などの抗菌薬の患者への投与だけではなく、 建物の床・手すり・トイレなど”人が触れる可能性があるもの”を徹底的に消毒する。という方法もあるのではないでしょうか?それも”自然界には存在しないほど高濃度の消毒薬で人間には害の無いもの” 例えば、高濃度の酸素には細菌・ウイルスは耐えられません。細菌の細胞膜やウイルスのカプシドが酸化されてしまって、分子構造が保てないからです。
高濃度の酸素で消毒するもの=オキシドール(過酸化水素水)です。病院の床・手すり・トイレ、スタッフの靴の裏などをオキシドールで消毒するようにすれば、案外多剤耐性菌も増やさず、院内感染も起こらないかも知れません。(^_^)